13の刺し傷

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左門寺は一睡もすることなく菊村、薫の二人の刑事と合流し、被害者が生前勤めていた『阿笠学園高等部』へとやって来た。早速校長室に通されて、校長と話すことになった。 「誠に信じられませんよ。まさか、あの山上先生が誰かに殺害されただなんて。今朝もずっとその話で生徒たちも騒いでました。生徒たちからすごく人気の先生でしたから」 「わかりませんよ?もしかしたら恐ろしいほどの恨みをどこかで買っていたかもしれません。そこら辺の“人の感情”というものは、他人にはわかりませんから」 冷たく言ったのは左門寺であった。専門は『異常犯罪』だが、心理学を専攻していることに間違いない彼は、『心理学』という学問の観点と、一般的な観点から(モトヅ)く意見を述べたのである。それを聞いた薫は左門寺の方をギロリと鋭く睨んだが、すぐに気を取り直して校長の方を向いて「彼のことを恨んでいる人には心当たりはなかったんですか?」と尋ねた。 「えぇ。なかったですね。山上先生は人当たりも良かったですし、トラブルを起こすような人ではなかったですから」 山上賢介が人当たりも良く、誰からも好かれる人であったことはわかった。だが、左門寺を含めたこの3人の捜査官たちは、その事実を疑っていた。誰からも好かれるような人が13ヶ所も刺されて殺害されるわけがない。誰かが彼を恨んでいたはずなのである。それを探るためにここまで来たのに、校長は知らないの一点張りでは、ここまで来た意味がなくなる。そこで左門寺は「山上さんが受け持ってたクラスの生徒さんに話を聞いても良いですか?」と尋ねたのである。 「え、生徒たちにですか?個人的に生徒たちは関係ないと思ってるんですけど」 校長は困った様子でそう返したが、それにさらに返したのが薫であった。
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