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「まさか、“ヤマセン”が死んじゃうなんてな」
「刺し殺されたらしいじゃん」
「13ヶ所だっけ?犯人やべぇよな」
「どんだけ恨んでたんだよって話」
「良い先生だったのにな」
「ほんとだよな。誰なんだよ、殺した奴______」
そんな会話が、その教室には流れていた。当然だ。そのクラスの担任教師が殺されたのだから______。
“ヤマセン”こと、“山上賢介”は、この阿笠学園高等部の教師である。『どんな授業も、楽しくなきゃ意味がない。』という信念を持ち、自分が行なう授業には、常にユーモアを含ませ、授業中は常に生徒たちに楽しいと思わせる出来た教師であった。加えて、彼は生徒たちとの向き合い方も他とは違って熱心であった。非行に走る生徒には、真正面から真摯に向き合い、その生徒の更生に努め、夜の繁華街の見回りなんかは毎日のようにやっていた。自分がどれだけ危険な目に遭ったとしても、生徒のためなら構わない______。まだ人としても大人としても発展途上の高校生をその子の思う正しい方向へと導いてあげるのが教師の仕事だと、常々山上賢介は言っていた。
そんな山上賢介が、何者かに殺害されたのである。生徒間では一体誰に殺されたのか、どうして殺されたのか、最初はただの疑問でしかなかったそれらは、次第に生徒たちの“探偵ごっこ”となっていく。
「きっと“ヤマセン”は同業者に殺されたんだよ」
「同業者って、教師ってこと?でもなんで?」
「だってほら、“ヤマセン”はめちゃくちゃ俺たちから人気だっただろ?だからそれを妬んでる奴に殺されたんだよ。だとしたら、同じ教師の中に犯人がいるって考えるのが自然だろ」
「でも自分より人気があるってだけで殺さないでしょ。アイドルじゃあるまいし」
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