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そんな彼女に話しかけたのは、幼馴染の幕井平太と草野修二であった。
「なーに黄昏てんだよ?」と平太。続いて、「後ろ姿、めっちゃ絵になってたけどね」と、笑って修二が言った。凪は振り返って、「別に黄昏てなんかないよ。眠かったから、気晴らししてただけ」と答えた。
「眠いって珍しいな。凪、寝不足だけはしないようにしてたのに」
平太もアリスと同じようなことを言う。
「珍しいことなの?」
修二が聞いた。
凪は屋上の手すりにもたれるようにして立ち、平太と修二がそんな彼女を挟むようにして立つ。
「珍しいことだよ。凪は昔っから頭良くてさ、寝不足になると頭の回転が悪くなるって言ってて、絶対寝不足はしないようにやってんのに、何かあったのか?」
「別に何もないってば。なんとなく眠れなかっただけ」
凪はあくびをかきながら冷たく答えた。
「凪ちゃん、ご飯は?食べた?」
修二が次に聞いた。
「食べてない」
凪は鬱陶しいと言わんばかりに答えた。そして、またひとつあくびをかく。
「そういえば、山上先生のことで警察の事情聴取受けたんだろ?どうだった?」
平太が思い出したかのように聞いた。それは今凪が一番聞かれたくない質問であった。だが、そのことについては修二も気になっているようで、「そうだそうだ!俺もそのこと聞きたかった!」と言った。
「どうだったって、別に何もなかったよ。聞かれたことに答えただけ。あの先生が死んだことに私は何も関係ないし」
ため息混じりに凪は答えた。それ以上答えることはなかった。
「えー、何もなかったのかよー。なんか面白いことありそうかなって思ったのに」
平太は残念そうに言った。修二は少し笑いながら、「人死んでんのに面白いはないでしょ」と彼に言う。
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