12人の容疑者

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「そういうことです。他のクラスの生徒たちを事情聴取した結果なんですけどね、ほとんどの生徒がアリバイがなかったんですよ。まぁたしかに、今はテスト期間です。そのテストというのは今から二週間後にあるらしいですね。そのテストのため、勉強をしていたという生徒もたしかにいました。ですが、クラスの女子生徒全員が『テスト勉強をしていた』というアリバイを証言したのはあなたのクラスの女子生徒たちだけなんですよ。そう、山室凪さん、君のクラスだけだったということです」 凪は少し動揺していた。しかし、アリバイがあったことに変わりはない。まさか、女子生徒全員が犯人なんて前例があまりない可能性だけを見て推理を進めているわけではないだろう。彼女はそう考えて自分を落ち着かせ、左門寺の方を振り向いて、「左門寺先生、意地悪ですね」と言った。 「さっきから私のこと試してるんでしょ?きっと先生の中では私が犯人だと思ってる。だから私のクラスの女子生徒たち全員にアリバイがあるのはおかしいだとか、さっきの私が事情聴取であの刑事さんが言ってたことを思い出したことなんかを突っついてきたんでしょ?」 「そんなに僕は意地悪じゃないと思っていたんですけどねぇ」 ヘラヘラ笑いながら左門寺は返した。その不敵な笑みが凪にとっては癪に障るものであった。 「まぁ意地悪じゃないとこんな仕事務まらないんでしょうけど。それに、そういう偶然も案外あるものですよ。私はあの日、たしかにテスト勉強してたんです。もし、私が山上先生を殺害したと思ってるなら、その推理は大外れですね」 凪は左門寺のその不敵な笑みに優しく微笑んで返す。癪に障るような笑みをこちらに見せた左門寺へのそれは彼女にとっては仕返しのつもりであった。
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