12人の容疑者

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平太の人嫌いは筋金入りである。特に、彼は大人に対しての嫌悪感は凄まじい。その理由は、平太の過去にあった。 平太は、虐待を受けていた。彼が生まれて一年もしないうちに、実の父親は出ていってしまい離婚。その後に母親が連れてきた男は、たしかに金を稼いできていたのだが、気に入らないことがあると平太を執拗に殴りつける凶暴な男で、その頃の平太は生傷が絶えなかった。そのことが原因となって、まだ小学生だった彼は保護施設に入ることになり、今まで親の愛情を受けたことがほとんどなかった。それゆえ、大人というのは、私利私欲のために平気で子どもを傷付ける恐ろしい存在なのだという固定概念が平太の心の中に残ってしまっていたのである。そのため、初めて平太が山上賢介が女子生徒に手を出していたことを聞きつけた時の怒りは、計り知れないものであった。 「アイツは、死んで当然だよ______」 平太はそう呟いた。その発言に驚いた凪がふと、彼の方を向いて、「どうしたの?いきなり」と聞いた。 「山上の奴、死んで当然だって言ったんだよ」 結局、どんな大人も同じだ______。私利私欲のためなら子どもを簡単に生贄にする______。この世の中には、きっとそんな大人しかいないんだ______。どこにいても、そんな大人しか見てこなかった平太は、「でも、俺はそんな大人にはならないよ。絶対……」と言う。彼のその決意は固かった。凪はそれを聞き、少し笑って「平太はならないよ。そんな大人には」と返した。 「なんでわかんの?」 「んー?勘!」 そう答えて凪はぺろっと舌を出す。平太は「なんじゃそりゃ」と言って笑ったのであった。
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