12人の容疑者

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しかし、それからの修二は、凪に振り向いてもらうために努力を重ねるようになった。もちろん、これまでやってきた努力も変わらずやり続け、それまでの努力を無駄にしないように力を尽くした。あまり好戦的なタイプではない修二だが、そう決意した時から闘争心というのが芽生えたのかもしれない。 努力家である彼の日課は、その日がテスト期間だろうと、毎晩10kmの走り込みは欠かさない。これは陸上を始めてから必ずやっていることである。やり始めた頃は、すぐに体力を使い切ってしまってダメになっていたが、今となってはそんなことはない。完走するまで相当の時間を要していたが、今となっては1時間ちょっとで完走できる。今晩もそれを男子寮の前でやっていたところに、平太は出くわして、「走り込みか?」と聞いた。 「あぁ。今まで毎日やってきたことだからね。これだけは欠かせない」 荒れた呼吸を整えながら修二は言った。 「熱心だな。テストはどうなんだ?赤点だったらまた監督に怒られるぞ?」 「俺よりお前の方がやばいんじゃないのか?平太、勉強は全然できなかっただろ」 一応これでも俺は優等生だぞ。と、修二はヘラヘラ笑って付け加えた。学業の成績に関しては、修二は平太に負けなしであった。平太は根っからの『直感型』の人間で、体を動かすことならある程度は教科書や説明書を読まなくてもできてしまう人間であるから、一から勉強というのは向いていない。そのため、いつもテストは赤点ギリギリか、もしくは赤点かのどちらかであった。そのことは凪にも指摘されていて、彼女からは『ある意味で天才』と称されていた。それとは反対に、修二は何事もひとつひとつコツコツとやるタイプで、勉強なんかも好きであった。
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