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(――背、高くなって、大人っぽくなってたな…。でも面影は変わってないなぁ。愛想ない喋り方も…) そんな思いがとりとめなく頭に浮かんだ。 さっきのレジでは普通の客の態度を取っていたのに、今になって急に胸がドキドキしだして緊張する。 私はもう一度ふーっと深く息を吐いた。 バスの微細(びさい)な振動が生ぬるく心地いい。塾も終わってあとは家に帰るだけだし、今はのんびりとリラックスして良い時間のはずだ。 ――それなのに、胸の鼓動はその後もずっと消えずに鳴り続けた。 唐突に石が投げ込まれ波紋が広がり続ける水面(みなも)を眺めるような、そんな気分を抱えながら、私は目を閉じてシートに背をもたせかけた。
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