隙間目

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 そんなやり取りをして、ふふっと笑う。すぐにスマホをしまった。 「お礼したいのはこちらなのに、結局お世話になっちゃいますね」 「お気になさらず。放っておけないですよ、人として」 「あ、弁護士さんの件はちゃんと依頼としてお金支払いますから」 「いいんですよ。実は友人関係でもあるんです。酒奢れば一発OKですから」  そんな弁護士、存在しない。弁護士の指示です、って言えば全部従ってくれる。 「あの、さっそくナトラから連絡きてたので。普通の会話しておきました」 「もし過激な内容になった時は言ってください」  そうして、徐々に不安をあおる内容を送ればいい。何を考えどう行動するか手に取るようにわかる。  あの部屋をすぐに出て、八年間追い続けて。学校やバイト先で孤立するような噂を流して。アプリで友達だと思ってたらやばい奴のキャラも作り上げて。整形もして。他の選択肢ができないように。  やっとここまできた。 「隙間は、その後大丈夫ですか?」 「あ、はい。前ほどひどくはないです。慣れていけるかもしれません」 「良かったです。あ、それなら」  それならもう大丈夫だろう。 「それなら、他に良い物件があるんです。家賃がもう少し安くて駅が近い。商店街があるので、食費がかなり抑えられる場所が一部屋だけあります。建物は古いですが、フルリノベーションしていてかなりきれいなんですよ」 「本当ですか? よかった、物件絞らなければいけない生活けっこう面倒だったんです。うわあ、内見行かせてください!」 「喜んで。次の土曜日はいかがですか」  バイトは全て休みだから。 「えーっと……あ、ちょうどバイトが休みです。お願いします!」 「はい、喜んで」  早く引っ越しておいで。俺が買い取ってフルリノベーションした特別な物件。隙間という隙間に詰めておいたよ。  目。  もう平気になってきたなら、もう少し増やしてもいいよね。
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