6165人が本棚に入れています
本棚に追加
再びあの場所へ
「アリシアー!会いたかったよー!」
大河が車で迎えに来てくれ、瞳子は懐かしいオフィスに戻ってきた。
ドアを開けるなり飛びつこうとした透の頭を、大河がガシッと押さえつける。
「それ以上近づいてみろ。タダじゃ済まんぞ」
「ガラ悪っ!大河、性格変わった?」
「お前ほどじゃない」
スタスタと奥のデスクに向かった大河の後ろで、瞳子は困ったように眉を下げて苦笑いする。
「やれやれ、毎度のことながらうるさい二人だな。ごめんね、瞳子ちゃん。さ、座って」
「はい」
洋平に促されて、瞳子はソファに腰を下ろした。
まずはコーヒーでも、と吾郎がカップを渡してくれて、3人で雑談する。
その周りをちょこまかと透が動き回っていたが…。
「それで、瞳子ちゃんに頼みたいことは、大まかにここにまとめておいたんだ。出来るところだけで構わないから、少しずつ取り掛かってくれる?分からないことは何でも聞いてね」
「はい。ありがとうございます、洋平さん」
受け取った書類を早速パラパラとめくってみる。
「ひゃー!なかなかタイトなスケジュールですね」
「そうなんだよ。このままじゃ、俺の体型ももやしみたいになるところだったよ。良かった、瞳子ちゃんが来てくれて」
「吾郎さんがもやしに?あはは!それは相当過酷ですね」
「だろ?瞳子ちゃんも言ってやってよ、あの悪代官みたいな大河にさ」
アリシア、俺もさ、君がいないとカイワレ大根みたいになるところでさ、としきりに透もアピールする。
「よし!じゃあ早速取り掛かりますね。吾郎さんがもやしになったら大変だもの」
瞳子は腕まくりして気合いを入れた。
俺もさ、カイワレ大根になりたくないんだよねと、もはやBGMのような透の声がする。
「じゃあ瞳子ちゃん、俺の隣のデスク使って。その方が説明しやすいから」
洋平がそう言うと、瞳子は、はいと返事をしてソファから立ち上がった。
反対の隣は俺なんだよ、アリシア、と透が後ろからついてくる。
瞳子は席に着くと、くるっと右に向きを変えて透と向き合った。
「透さん、またよろしくお願いしますね」
にっこり笑う瞳子に、透は言葉も忘れて見とれる。
「何だよ、おい。肝心な時に無口になるんだな」
吾郎の茶々も耳に入る様子はなく、透はただポーッと顔を赤くしていた。
最初のコメントを投稿しよう!