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『へえ、いいんじゃない?引き受けたら?』
沼田との打ち合わせを終えて外に出ると、瞳子は千秋に電話をかけた。
次回の新作モデル発表イベントの司会を頼まれたことを伝えると、千秋はあっさりそう言う。
『前回の瞳子の司会ぶりを見てまた依頼してくださったなら、事務所としても応えたいわ。瞳子はどう?やっぱりまだ控えたい?』
「えっと、正直言うと少し心配です。SNSで噂になったのは、前回のホーラ・ウォッチの時の写真だったから。もしかして、また今回も同じようにって」
電話口の向こうで、千秋がうーん…と考えている気配がする。
瞳子は黙って言葉を待った。
『ね、瞳子。ホーラ・ウォッチの司会をしたら、また写真に撮られて噂になるかもしれない。だけど、しなかったらそれはそれで、やっぱりやましい事があるんだ、と言われるかもしれない。どのみち何か言われるなら、瞳子がやりたい通りにしたら?』
「どのみち何か…」
そうかもしれない。
自分の素性がバレたきっかけとなったイベントが再び開催される以上、何かしらの反応は予測出来る。
たとえ自分が司会をしてもしなくても。
それなら、と瞳子は考えた。
何を言われるのだろうとビクビクするよりは、どうぞご自由に、と大きく構えていたい。
やましい事など、自分にも友也にも、何もないのだから。
「千秋さん、私やってみたいです。大河さん達にも相談して、OKならやります」
電話の向こうで千秋がふっと笑う。
『分かったわ。事務所も全面的にあなたをバックアップするから。思い切りやりなさい』
「はい!ありがとうございます」
瞳子は電話を切ると、顔を上げて颯爽と歩き始めた。
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