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二人を尻目に黙々とアイシングをしていた瞳子は、ひと通り作り終えて、ふう、と肩の力を抜く。
スマートフォンで何枚か写真を撮ると、うん、と写り具合を確かめてから、大河にクッキーを勧めた。
「良かったらどうぞ」
「え、いいのか?」
「はい。無事に写真も撮れましたし、洋平さんと吾郎さんの分もよけておきましたから。あ、今コーヒーを淹れますね」
瞳子はマグカップにコーヒーを淹れ、皿にクッキーを3枚載せて大河の前に置く。
「お口に合えばいいのですけど」
「ありがとう。いただくよ」
大河は大きめのクッキーを1枚つまむと、じっくり眺めてみた。
真っ白なクッキーに、枝が分かれるように丁寧に結晶の模様が描かれている。
(確かに食べるのがもったいないな。美しくて芸術的だ)
感心してから、ゆっくりと口に運んだ。
サクッとした歯ごたえと程よい甘さのクッキーは、手作りとは思えない美味しさだった。
コーヒーともよく合い、気づけばあっという間に3枚とも食べてしまった。
「美味しかった。ありがとう」
「いいえ。あの、このクッキーを見本にオーダーして、オープニングイベントのお土産と一緒に、ゲストの方々にお配りしても構いませんか?」
「ああ、いいと思う。SNS映えもするし、子ども達や女性にも喜ばれるだろうな」
「はい!ありがとうございます」
いつの間に付いてしまったのか、頬にアイシングクリームをちょこんと付けたままにっこりと笑う瞳子を、大河は目を細めて見つめていた。
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