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怒涛の12月が始まった。
ホーラ・ウォッチの新作モデル発表イベントを皮切りに、ミュージアムのオープン、テーマパークのクリスマスショー、そして年末納期の企業CMと続く。
まずは12月1日のホーラ・ウォッチのイベント当日。
この日ばかりは担当の洋平だけでなく、大河達も総出で現場に向かった。
機材をたくさん積んだワンボックスカーと、大河の車、2台に別れて前回と同じショッピングモールに着くと、早速準備に取り掛かる。
瞳子もある程度手伝うと、頃合いを見て司会者の控え室に向かった。
衣装に着替えて担当の沼田と最終確認を終えると、隣のハルの控え室をノックする。
「はーい、どうぞ」
明るいハルの声がして、瞳子は、失礼致しますとお辞儀をして中に足を踏み入れた。
「あ、瞳子ちゃーん!お久しぶり!」
ドレッサーの前でメイクの途中だったハルが、鏡越しに笑いかける。
「ハルさん!お久しぶりです。今日はよろしくお願い致します」
「こちらこそ。瞳子ちゃんの今日の衣装、シックでとっても素敵ね」
「あ、これで大丈夫でしょうか?ハルさんの衣装と被るなら、別の物に着替えますが…」
「大丈夫よ。私の衣装、今日は真っ白なの」
そう言って、壁に掛けてある衣装に目をやる。
言葉通り、目の覚めるような白いワンピースだった。
ふんわりとスカートが広がり、フレンチスリーブで肩のラインも綺麗なデザインだ。
「わあ、素敵!ハルさんに似合いそう」
「ふふ、ありがとう!ね、瞳子ちゃん。忘れてない?例のプレゼント」
「はい。持ってきましたよ」
「やったー!着替えたら早速交換しよ!」
すると横で話を聞いていたマネージャーの女性が、やや咎めるように口を挟む。
「ハル、まずは打ち合わせをしなさい。恋人からのプレゼント、とか、彼とのデートとか、NGワードをちゃんと伝えないと」
ハルは途端にシュンとして、瞳子に肩をすくめてみせる。
「今回はわたくしも充分気をつけます」
瞳子がマネージャーに頭を下げると、ハルも小さく付け加えた。
「私もちゃんと気をつけます」
マネージャーは「頼んだわよ」と言い残し、沼田との打ち合わせに部屋を出て行った。
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