空間の支配者

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「今回の新作モデル『Snow White』は、文字通り、雪の白さという意味の他にも、白雪姫を指すこともありますね。谷崎さんはお肌も白くて、まさに白雪姫のイメージにピッタリです。いかがですか?新作モデルの『Snow White』を着けてみたご感想は」 「はい。文字盤がキラキラしてとても綺麗で、いつまでも見ていたくなります。パールホワイトのベルトも素敵ですし、気分に合わせてアイスブルーのベルトに付け替えることが出来るのもいいですよね」 「そうですね。この新作には付け替え用のアイスブルーのベルトが付属されています。その日の装いのアクセントにもなりますし、この季節ならではの色合いを楽しむことが出来ます。この『Snow White』を着けていれば、この冬は素敵な思い出が出来そうですね。それではこれより、『Snow White』の世界観をお楽しみ頂けるプロジェクションマッピングを上映致します。谷崎さん、ご準備をお願い致します」 「はい」 ハルがマイクを瞳子に渡して、ステージ中央に立つ。 瞳子が大河に目配せすると、大河はインカムでメンバーに合図を出した。 『スタンバイOK。照明ダウンまで5秒。4、3、2…スタート』 辺りが一気に群青色に染まる中、ハルの前に丸い光が現れる。 シャンシャン…と鈴の音がどこからともなく聞こえてきて、ハルは両手で光を掬って頭上に掲げた。 するとそこからパーッと光が放射線状に放たれ、皆は思わず目を細める。 やがて光は無数の輝くクリスタルとなって降り注ぎ、5階の吹き抜けの天井からトナカイの引くそりがやって来た。 クリスマスソングに合わせて、サンタクロースを乗せたそりは、空中を自由自在に飛び回る。 やがてハルのすぐ近くまで来ると、サンタクロースはハルにプレゼントを差し出した。 手を伸ばし、笑顔で受け取るハル。 と次の瞬間、ハルの着ていた真っ白なワンピースが、水色の雪の結晶柄に変わった。 いつの間に付け替えたのか、ハルの手首の時計も、アイスブルーのバンドに変わっている。 最後にショッピングモールの1階から5階までを使い、巨大なクリスマスツリーと雪景色が映し出された。 軽快なクリスマスソングがだんだん盛り上がり、トナカイとサンタクロースがまた空へと帰って行く。 残された大きなツリーとハルの笑顔。 そして曲の終わりと共に、 Merry Christmas!と大きな文字が浮かび上がった。 (ひゃー!素敵、綺麗!ハルさんの白いワンピースにもプロジェクションマッピングを投影したのね。もう大感激!) ステージの隅で、瞳子は目を輝かせて映像に魅入る。 映像の映り具合を確認していた大河は、視界に入ってきた瞳子の子どものように無邪気な笑顔に、思わずふっと笑みを洩らしていた。
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