雪の芸術

4/7
前へ
/195ページ
次へ
「やあ、アリシア。メリークリスマス!」 イベントスペースに行くと、マイクやスピーカーのセッティングをしていた透が、瞳子に気づいて笑顔を向ける。 「透さんったら。今日はクリスマスパーティーじゃないですよ?」 そう言いつつも、瞳子もメリークリスマス!と笑顔で返す。 「クリスマスパーティーか。仕事が落ち着いたらやりたいよね」 「いいですね。でも、落ち着きますか?仕事」 「うぐっ、それだな。クリスマスイブもクリスマス当日も仕事だった」 あはは!と瞳子は明るく笑う。 「でもそれもいいか。君と一緒に過ごせるからね。俺のテーマパークのショーも手伝ってくれるんだろう?アリシア」 「はい、もちろんです」 「良かった。君に最高にロマンチックなひとときをプレゼントするよ。楽しみにしててね」 透がウインクしてみせると、ガシッと後ろから吾郎が透の首に腕を回した。 「おいおい。大事な勝負の日にナンパするとは余裕だな」 「当たり前だろ?大河が仕上げた映像だ。完璧に決まってる」 そう言うと吾郎の腕を外し、じゃあ、またあとでね!アリシア、と手を挙げて軽い足取りで去っていった。 「まったくもう…。あいつすっかりアメリカンキャラが板についてきたな。透じゃなくて、トニーって呼ぼうか」 吾郎のボヤキに瞳子も思わず吹き出す。 「確かに合ってるかも!トニー」 「いや、やめよう。ますますつけ上がりそうだからな。それより瞳子ちゃん、控え室にいなくていいの?」 「その前に、ミュージアムショップの様子と、ゲストにお配りするノベルティとクッキーの確認をしたくて」 「ええー?そんな、いいのに。瞳子ちゃんは今日は司会に専念してくれれば」 「ううん、私が気になるだけなんです。ちょっとだけ見てきますね」 瞳子は吾郎と別れて、エントランスの横のショップコーナーを覗いた。 「わあ、素敵!」 雪の結晶をモチーフにした商品が、綺麗にディスプレイされている。 全て瞳子が手配した物だったが、こうして店頭に並ぶとなんだか感慨深くなる。 「このネックレス、可愛いよね。彼におねだりしてみようかな」 「私もー。代わりにこのペアのマグカップは私がプレゼントしよう」 販売員の女の子達が、商品を並べながら楽しそうに話している。 (私もあとで爆買いしちゃおう!もう、ここからここまでって、セレブ買いよ。ぐふふっ) 瞳子は思わず不気味にほくそ笑む。 次は、ノベルティとアイシングクッキーの確認に、受付のテーブルに向かった。 ここでもスタッフの女の子達が、 「可愛いねー!このクッキー」 「私も欲しいなー」 と笑顔で準備をしていた。 (うん、想像以上の出来栄え。良かった) 早くゲストの反応が見たいなと、瞳子はウキウキしながら控え室へと歩き始めた。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6165人が本棚に入れています
本棚に追加