悲しい告白

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「綺麗だったー」 「うん、素敵だったね」 感想を言いながら立ち上がる人々を、瞳子は順路に沿って誘導する。 ようやく人の波が落ち着くと、それぞれポジションに着いていたメンバーも噴水前に戻って来た。 「お疲れー。どうだった?特に問題なかった?」 「ああ。透、映像なかなか良かったぞ」 「ほんと?やったね。あ、ちょっと待ってて」 ふと遠くに目をやって駆け出した透は、若い男性の5人組と何やら握手をしたり、笑顔で肩を叩き合っている。 (あ、もしかして花火会社の人なのかな?) おそらくそうだろう。 透とショーの成功を喜び、労い合っているに違いない。 (花火も素晴らしかったな。あんなに音楽と一体化して打ち上げるなんて、どんな技術なんだろう) そう思いながら客席の片付けをしていると、 ふいに後ろから声をかけられた。 「やあ、ひょっとして君がアリシアかな?」 え?と瞳子が振り返ると、先程透とガッチリ固い握手を交わしていた男性がにこやかに立っていた。 「君の話は散々透から聞いてるよ。君にゾッコンみたいだね。なるほど、確かに稀に見る美人だな。俺は(つかさ)だ。よろしく」 そう言って強引に瞳子の右手を握る。 爽やかな笑顔を浮かべているが、瞳子は直感的にこの男性に嫌悪感を持った。 「あ、初めまして。間宮と申します。よろしくお願いします」 そこで手を離そうとするが、司と名乗った男性は一向に手を緩めない。 「君、このあと時間ある?せっかくのクリスマスイブだ。どこか雰囲気のいいレストランにでも行かないか?」 「いえ、あの。仕事が残ってますから」 瞳子はなんとか手を解こうと、後ずさりながら答える。 離すまいとする男性の力が怖くなり、身体がすくんだ。 「こんなに綺麗な女性をクリスマスイブまで仕事させるなんて。いったいどういう連中なんだ?アートプラネッツは」 「こういう連中ですが、何か?」 「大河さん!」 スッと二人の間に身を滑らせた大河は、瞳子の手を握っていた男性の右手を強引に掴んだ。 「初めまして、アートプラネッツの冴島です。今回はうちのスタッフがお世話になりました」 そう言って握手するが、男性が顔をしかめたところを見ると、どうやら握手にしては力の入れ過ぎなのだろう。 瞳子は大河の背中に隠れながら、そっとその横顔を見上げる。 口元に笑みを浮かべているが、目元には青筋も浮かんでいた。 「今夜のショーは大成功でしたね。明日もまたよろしくお願い致します。それでは」 ようやく手を離すと、大河は優雅にお辞儀をしてから踵を返す。 「帰るぞ」 「あ、はい」 瞳子は返事をすると、ピタリと大河のあとをついて行った。
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