悲しい告白

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翌日のショーは、準備から段取りも良く、気持ちにも余裕を持って臨めた。 夕べショーを観た人がSNSで話題にしたのもあり、観客の人数はぐっと増えていたが、瞳子は落ち着いて誘導に当たった。 大きなトラブルもなく終了し、ホッとしながら片付けに取り掛かる。 「アリシアー!このあとパーティーだからね。準備もバッチリだからね」 透はプロジェクターを片付けながら、ウキウキと瞳子に声をかける。 「透、お前今日の仕事はここからが本番なのか?」 「ある意味そうだね」 しれっと真顔で言う透に、吾郎はガックリとうなだれた。 「やれやれ。こんなソワソワした状態で、よくトラブルなく終えられたもんだよ」 確かに、何事もなくて良かった、と瞳子も苦笑いを浮かべた。 機材を台車に載せると、透は腕時計に目を落とす。 「今から帰ると、21時にはパーティー始められるね。楽しみー!デリバリーも豪華に頼んだから、期待しててね、アリシア」 「あはは…、はい」 二人でガラガラと台車を押し始めた時、透がふと足を止めた。 「あ、ちょっと待ってて。最後にパークの担当者とファイヤーワークマンの皆さんに挨拶してくる」 「分かりました」 透が、少し離れたところにいる5人組とパークのスタッフのところに駆けて行き、瞳子は人の邪魔にならないように少し台車を動かした。 通路沿いの壁に台車を寄せてストッパーをかけた時、やあ!と声がして顔を上げる。 夕べの、司と名乗った男性が、またしてもすぐ近くに来ていた。 「お疲れ様。無事に2日間終えられて良かったね」 「あ、はい。お疲れ様でした」 頭を下げながら、瞳子は少し後ろに下がる。 「そんなに警戒しないでよ。ただ挨拶しに来ただけなんだ。また一緒に仕事が出来るといいね」 「はい。機会がありましたら、よろしくお願い致します」 すると男性は瞳子に名刺を差し出した。 あくまで仕事の話なのだからと、瞳子は手を伸ばして名刺を受け取る。 次の瞬間、男性は瞳子の手首を掴むとグイッと力任せに引き寄せた。 勢い余ってよろけた瞳子をすかさず抱きしめると、瞳子の左の頬にチュッと口づけた。 「なっ…!」 瞳子の全身に悪寒が走る。 「また会えるのを楽しみにしてる」 耳元で囁かれ、更なる嫌悪感に身体が一気にヒヤッと冷たくなる。 男性はクスッと瞳子に笑いかけてから身体を離し、足早に去っていった。 瞳子は思わずその場にしゃがみ込み、両手で身体を強く抱きしめる。 ガタガタと震えが止まらない。 蘇る恐怖に涙がこぼれそうになった時、どうした?!と大河が駆け寄って来た。 「大丈夫か?」 「…大河さん」 屈み込んで心配そうに顔を覗き込む大河の眼差しに、瞳子は気が緩んで涙を溢れさせる。 「何があった?!誰かに何かされたのか?」 真剣に聞かれるが、瞳子はただ首を振る。 思い出すのも、口にするのも嫌だった。 「大丈夫…です」 大きく息を吸って気持ちを落ち着かせると、ゆっくりと立ち上がる。 まだ心配そうに気遣う大河に、瞳子は懸命に笑顔を取り繕った。
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