寂しさを抱えながら

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3日後。 【六花〜雪の芸術〜】をテーマにした表参道のミュージアムは、大盛況のまま幕を下ろすことになった。 クロージングセレモニーの最後に、次回の予告として流れた映像は、桜や富士山、京都の風景など、日本らしさを感じられるもの。 それらを次々と映し出し、最後に 『 in Paris 』 の文字が浮かび上がった。 「アートプラネッツの世界観は、遂に海外へと羽ばたきます。どうぞご期待ください!」 瞳子のセリフで締めると、マスコミは一斉に質問を始めた。 「詳細は?」 「いつですか?」 「パリのどこで?」 大河がゆっくりと前に歩み出て、マイクを握る。 「オフィシャルサイトで随時お知らせしていきますので、更新をお待ち頂ければ幸いです」 カメラのフラッシュが瞬く中、「冴島さん、意気込みをひと言!」と声がかかった。 大河は小さく頷いてマイクを握り直す。 「アートプラネッツの作品を、日本が誇る技術として自信を持ってお届け出来るよう、精一杯取り組んでまいります。国を超え、言葉や文化の違いを超えて『良いものは良い』と思って頂けるよう、全力で挑みます」 力強い宣言に、おおっ!とどよめきが起こり、またフラッシュが眩く光る。 大河の精悍な横顔を見ながら、瞳子は心の中で大河のセリフを思い出していた。 (良いものは良い) いつかの自分の言葉を口にしてくれた大河。 まるで心が繋がっているような気がして、瞳子はじっと大河から目を離せずにいた。
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