6168人が本棚に入れています
本棚に追加
思いがけない電話
「大河。頼まれてた資料、ここに置いておくぞ」
「ああ、サンキュー」
パリで上映する作品作りに、4人は力を合わせて取り組んでいた。
和のテイストでまとめ、日本の美しい風景をデジタルの世界で表現していく。
コンピュータテクノロジーで、古き良き日本の伝統を伝えられるのか?
そんな迷いはもうなかった。
大河の心にあるのは、あの時の瞳子の言葉。
『本物か偽物か、なんて関係ないです。良いものは良い、それだけです』
今も、そしてこれからも、瞳子の言葉は自分の道しるべだった。
一方で、瞳子のことを思い出す度に胸が苦しくなる。
あんなにも純粋な彼女が、一生恋愛出来ないと言い切るなんて。
なんとかして救ってやりたい。
だが、男である自分には出来ない。
なぜなら彼女を苦しめているのは【男性】だからだ。
どうすればいいのだろう、と考え始めると堂々巡りになり、抜け出せなくなる。
大河は頭を振って、目の前にあるやるべきことに集中しなければ、と気を引き締めた。
最初のコメントを投稿しよう!