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友達以上恋人未満…ってなに?
「ふふっ、みんな楽しそう。透さん、この時からもう顔が真っ赤!」
車の中で、瞳子は先程撮ったばかりの写真を見ながら微笑む。
大河はそんな瞳子の横顔を、チラリと盗み見た。
穏やかで優しい笑みを浮かべている綺麗な横顔。
(これからも毎年誕生日は、恋人に祝ってもらわないのだろうか…)
今夜の瞳子は心底楽しそうで、恋人と過ごせなくても何とも思っていないようだった。
きっとこの先の誕生日も、こんなふうに身近な友人と過ごすだけで満足するのだろう。
(本当にそれでいいのか?)
あの時の瞳子の言葉を思い出す。
『私は誰かを好きになっても、恋愛することは出来ません』
悲痛なその言葉は、言い換えれば、この先誰かを好きになることだって充分あり得るということだ。
『どんなに好きな相手でも、過去の恐怖が蘇ってしまうからです』
だったら、過去の恐怖を克服すればいいのでは?
そう思うが、そんなに簡単なことではないはずだと思い直す。
(克服する為には、恐怖と対峙しなければならない。これ以上傷つかなくてはいけないなんて…)
もう二度と傷ついて欲しくない。
いつも笑顔でいて欲しい。
それならやはり、このままが一番いいのか?
だけど、やっぱり…
ぐるぐるとまとまらない考えに翻弄されていると、ふいに瞳子が、大河さんと呼んだ。
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