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「ん?なんだ?」
「もしかして、私を車で送る為にお酒を飲まなかったんですか?だとしたらすみません」
「いや、気にするな。まだ仕事が残ってるから、飲まなかっただけだ」
「それなら、なおさら申し訳ないです。お忙しいのに…。毎日ちゃんと身体休めてますか?」
「ああ、仮眠室で寝てる。ここで倒れる訳にはいかないからな」
「そうですね。パリでの成功を、私もお祈りしています」
「ありがとう」
やがて瞳子のマンションに着いた。
大河はエンジンを切ると、じっと何かを考え始める。
「大河さん、送ってくださってありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね」
そう言って助手席のドアを開けようとした瞳子を、ちょっと待って!と呼び止めた。
「どうかしましたか?」
不思議そうに振り返る瞳子に、大河は、うん、あの…と言葉を濁す。
瞳子は開けようとしていたドアから手を離し、大河の方に向き直った。
じっと大河の様子を伺うように、黙って言葉を待っている。
大河は意を決して顔を上げた。
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