友達以上恋人未満…ってなに?

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「あの、大河さん」 見かねて瞳子が話し始めた。 「私、以前にもお話しましたが、男性とおつき合いすることは出来ないんです」 「いや、だから…。つき合うとか、そんなことは考えなくていいんだ。ただ、こうやって時々二人で話したり、どこかに遊びに行ったりするだけならいいか?」 「それは、恋愛じゃなくて?」 「そう。ほら、小学生の男女が一緒に遊んでても、つき合ってるとは言わないだろ?」 「え、言いますよ?最近の子は5年生でも、彼氏いまーすとか言うんですって」 「ええー?!そうなのか?すごいな、令和の時代って」 いや、そうじゃなくて!と大河は自分に突っ込む。 「それなら、たとえ幼稚園児と同じだと言われてもいい。君と一緒に過ごしたいんだ」 瞳子はパチパチと瞬きしてから、ためらいがちに口を開いた。 「あの、これは私の率直な気持ちなんですけど…」 「ああ、なんだ?」 「大河さんと一緒に遊びに行くのは、楽しそうだなって思います。それに大河さんのお気持ちも嬉しいです。でも私、大河さんの望むことは何も出来ないかもしれません」 「もちろん、構わない。君に何かをして欲しいとか、こう思って欲しいなんて望んでいない」 「一緒にいて、その先に関係が変わっていくこともないかもしれません」 「ああ、それでいい」 「本当に?大河さんなら、どんな女性とでも恋愛出来るでしょう?どうして私なんかに、そんな無駄な時間を使おうとするんですか?」 すると大河は、正面から真っ直ぐに瞳子を見つめた。 「無駄な時間なんかじゃない。俺が君のそばにいたいんだ。頭であれこれ考えずに、ただ素直な気持ちを聞かせてくれないか?」 瞳子はしばし間を置いてからコクンと頷く。 「これから時間がある時は、メッセージを送ってもいい?」 瞳子はまたコクンと頷く。 「良かった。じゃあ今夜はこれで」 「え?!終わり?」 「うん。え?ダメなの?」 「いや、だって。あんなに長々話してくれたのに、最後はそんなにあっさりなんて…」 大河は瞳子の顔を覗き込む。 「それなら、その…。手に触れても、いい?」 恐る恐る聞くと、瞳子はちょっとうつむいてから頷き、膝の上にあった両手を小さくキュッと握る。 大河はおずおずと手を伸ばし、瞳子の両手をそっと掬い上げてから優しく握りしめた。 瞳子はちらっと上目遣いに大河を見ると、すぐにうつむいてはにかんだ笑みを浮かべる。 (か、可愛い…) 大河は思わず顔を真っ赤にする。 身体中が一気に熱を持つのが分かった。 下唇を噛んで、抱きしめたくなる衝動を懸命に抑えた。 「大河さん?大丈夫ですか?」 梅干しでも食べたような顔の大河に、瞳子が心配そうに尋ねる。 「大丈夫だ。なんのこれしき」 そうだ、自分は少しでも彼女の傷を癒やし、もう二度と傷つかずに済むように、そばにいさせてもらうんだ。 彼女を守れるなら、それだけでいい。 己の欲なんて抑えてみせる。 たとえ相手が、美人でスタイル抜群で、笑顔も可愛らしく、優しくて健気な…、そう、とびきり素敵な極上の女性でも。 大河は心に固く誓うと、大きな手のひらで瞳子の両手を優しく包み込んだ。
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