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二人の時間
「おい大河。さてはお前、女が出来たな?」
洋平の鋭い視線に、大河はギクリとし、デスクに置いてあったスマートフォンから、慌てて目を逸らした。
「いや、違う」
「嘘つけ!だったら今スマホに届いたメッセージは誰からだ?鼻の下伸ばしてニヤニヤ眺めてたぞ?」
「本当に違うんだ。彼女とかじゃなくて、その、メル友、かな?」
メル友ー?!と洋平は大きな声で仰け反る。
「まさか、お前の口からそんな言葉が…。それにお前、メル友なんてもはや死語だぞ?」
「そうなんだ。でも俺の中では旬なんだ」
「メル友が?!」
「ああ」
洋平はしばらくマジマジと大河を見ると、やべー、壊れたのかも…と呟く。
「大河、ちょっと休み取れ。頭がバグってる。一旦、制作から離れてリフレッシュしてこい」
「え、休みを?」
「ああ。毎日パソコンに向き合ってたら、感覚も感性もおかしくなる。気分転換して新鮮な気持ちでもう一度仕切り直した方がいい」
確かにそうだ、と大河も納得する。
どんな作品でも、作っていく過程で必ず一度は行き詰まることがある。
そんな時は思い切って一度離れてみる。
まったく別のことをしたり、気晴らしをしてから改めて作品に戻ると、それまで見えなかったものが俯瞰で見えてきたりするのだ。
「1日ゆっくり、オフィスには来ないで外に出てみろ。な?」
洋平の言葉に、大河はありがたくそうさせてもらうことにした。
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