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「瞳子さん?瞳子さーん!」
「わっ!びっくりしたー。なあに?亜由美ちゃん」
「なあにじゃないですよ。まーた魂、第三惑星まで行ってましたよね?」
「大丈夫、地球にいるよ?」
「でも日本にはいなかったですよね?海外とか?」
瞳子は内心ギクリとする。
(確かに。魂はフランスに行ってたかも…)
大河が渡仏してから1週間が経った。
『無事に着いたよ』という初日のメッセージと、エッフェル塔を見に行ったという写真が次の日に送られてきたが、それからパタッと何も来なくなった。
(準備で忙しいんだろうな)
仕方ない、と思いながらもどこか寂しく感じる。
そんな自分の心の変化にも驚いていた。
オフィスで仕事をしていても、ふと手が空いた時に大河のことを思い出してしまう。
どうやら傍目にもボーッとしているのが分かるのか、今も亜由美に指摘されてしまった。
気を引き締め直して、瞳子は仕事に戻る。
MCの依頼は順調に増え、やりたい仕事が出来ることに感謝しながら準備や打ち合わせを進めていた。
明日はクラシックコンサートのMCをすることになっており、先方との最終確認を終え、原稿の見直しをしてから退社する。
帰宅すると、ちょうど20時になったところだった。
(えっと、パリは今お昼ね。みんなどうしてるかな?)
考えながら、簡単に夕食を作って食べる。
するとスマートフォンにメッセージが届いた。
「あ、大河さんからだ!」
思わず声に出して喜んでしまう。
最初に目に飛び込んで来たのは、ビシッとタキシードに身を包んだアートプラネッツ4人の写真。
「ひゃー!かっこいい!」
なんだか国際映画祭にノミネートされた日本人俳優のような雰囲気だった。
続けてメッセージを読んでみる。
『無事に準備完了。これからオープニングセレモニーです』
もう一度写真に目をやると、4人の背景は華やかに飾られたどこかのミュージアムのようだった。
「わあ、素敵!アートプラネッツの映像がこの空間いっぱいに広がるのね。観てみたかったな」
そう思いつつ、返信する。
『いよいよですね。頑張ってください。皆さんの想いが世界に届きますように』
すぐに『ありがとう』と返事が来る。
瞳子は胸を高鳴らせながら、再び写真を眺めていた。
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