変わりゆく心

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穏やかな笑みを浮かべて写真を眺めていた瞳子が、次の写真をめくってふと真顔になる。 どうしたのかと横から覗いてみると、大河達4人が並ぶオープニングセレモニーの写真だった。 「この写真がどうかした?」 「あ、はい。大河さんが、とってもかっこよくて」 ………は?と、思わず間抜けな声を上げてしまう。 「ど、どういうこと?」 「だってこんなにビシッとタキシードを着こなして、スタイルもいいし。なんだか私の知らない大河さんみたい。もう気軽に話しかけたり出来ないような…」 「ま、まさか!何を言ってるの?」 軽く笑い飛ばそうとしたが、瞳子はじっと写真を見つめたままだ。 「私、大河さんがパリにいる間、ずっとメッセージを待ってたんです。今日は届くかな?あー、やっぱり来なかったってガッカリして。そしたらだんだん寂しくなってきたんです。もう会えないのかな?会いたいなって、気がつけば毎日そう考えていて…。だから今日、大河さんの姿を見た時、私、嬉しくて!」 そう言って瞳子は、まるで可憐な花が咲いたような笑みを浮かべて大河を振り返った。 その瞬間、何も考えられなくなった大河は、いつの間にか瞳子をギュッと抱きしめていた。 柔らかい身体を腕に感じ、ふわっと鼻をくすぐる良い香りに胸が切なく痛む。 だがハッと我に返り、慌てて手を離した。 「ごめん!俺、つい…」 後ずさって謝ろうとしたが、なぜだか身体が離れない。 え?と、不思議な感覚に戸惑っていると、背中に温もりを感じた。 瞳子が自分を抱きしめている、と分かったのは、数秒経った後だった。 (ど、どうして…) にわかには信じ難い。 瞳子が自分の胸に頬を寄せ、背中に両腕を回して抱きついているなんて… 大河はされるがままになり、しばし呆然とする。 やがて瞳子は小さく、あったかい…と呟くと、そっと腕を解いてから、照れたように大河に微笑んだ。 驚きすぎて身体が動かない。 いや、動かなくて良かった。 でなければ、頭の中で何かがプツンと切れて、瞳子を押し倒してしまったかもしれないから。 ゴクリと唾を飲み込むと、大河はスマートフォンをポケットに入れて立ち上がった。 とにかく、一刻も早くここから出なければ。 心を無にすると、 「そろそろ帰る。おやすみ」 と言い残してそそくさと部屋を出る。 玄関のドアがパタンと閉まると、大河はその場にヘナヘナとしゃがみ込んだ。 (はあ、マジでやばかった) 瞳子の部屋に上がり、二人切りになるシチュエーションがそもそも想定外だったのだが、その上にまさかあんな事態になるとは。 リハビリとして自分と二人で過ごしてくれればと思っていたが、そんなに簡単な話ではないということを、大河はようやく身に染みて感じていた。
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