恋人としての未来

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「わあ…素敵!夜景も綺麗だし雰囲気も落ち着いてますね」 「ああ。なかなかセンスがいいな」 Bar. Aqua Blueと書かれたドアを開け、二人は店内に入る。 お好きな席へどうぞ、とマスターににこやかに声をかけられ、瞳子は中央の大きな水槽の横のテーブル席を選んだ。 二人で向かい合って座り、瞳子はソルティドッグを、大河はウイスキーをロックでオーダーする。 お酒を待つ間、瞳子は色とりどりの小さな魚達を眺めた。 「水槽って、見てるだけで気持ちが落ち着きますね」 「そうだな。俺もいつかオフィスに置きたいと思ってたんだ」 「そうなんですか?わあ、いいですね」 「ああ。本気で考えようかな」 「ええ、ぜひ!最近は水槽の設置やプロデュースから、メンテナンスまでやってくれるリース会社もありますしね」 「へえ、そうなんだ。手入れが大変そうで二の足を踏んでいたが、メンテナンスしてくれるなら心配ないな」 「はい。早速見てみますか?」 瞳子はスマートフォンを取り出すと、水槽のリース会社を検索する。 「ほら、色々プランもありますよ」 「ほんとだ。いいな、これ」 二人で顔を寄せ合って画面を覗き込む。 やがてオーダーしたお酒がサーブされて二人は乾杯した。 「美味しい!お酒なんて久しぶり」 「そうなのか?」 「ええ。やっぱり一人だとお店に行く勇気が出なくて…」 そうだろうな、と大河は納得する。 最初に店内に入った時、フロア中の男性が瞳子を見て、一斉に色めき立つのが分かった。 もし横に自分がいなければ、あっと言う間に声をかけられていただろう。 お酒の席というのもあり、強引に言い寄られることは簡単に想像出来た。 瞳子は伏し目がちにグラスを手に取り、少し揺らして色を楽しんでから、ゆっくりと口をつける。 普段の美しさに妖艶な大人っぽさも混じって、大河は頭の中がクラッとした。 邪念を取り払うように、一気にグラスを煽る。 瞳子は1杯目のグラスが空になると、2杯目にロングアイランドアイスティーを頼んだ。 「お酒は強いのか?」 アルコール度数が高いカクテルに、大河はふと気になって聞いてみた。 「強いですよ。酔っちゃうと防御の姿勢が保てないので、いつも酔わないです」 「防御の姿勢…。ゲームみたいだな」 「ふふっ、そうです。鎧と盾で完全防備です」 瞳子は面白そうに笑っているが、きっと何度も嫌な思いをしてきたが故にそうなったのだろう。 (今夜はそんな懸念など忘れて楽しんで欲しい) 微笑みながら夜景に見とれる瞳子を、大河は優しく見守っていた。
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