6163人が本棚に入れています
本棚に追加
食事は笑顔で楽しんだが、食べ終わってソファに並んで座ると、急に静けさが広がった。
「今回の滞在も3週間?」
「ああ」
「そんなに会えないの…」
ポツリと寂しそうに呟いてから、瞳子は慌てて笑顔を取り繕う。
「大河さん達の作品が、どんどん海外でも注目されて嬉しいです。イタリアでも素敵な展覧会になりますように」
「ありがとう」
大河は優しく微笑んでから、瞳子、と顔を覗き込む。
「無理してない?」
「…え?」
「今、無理して笑おうとしてる?」
「ううん。無理なんて、してないです」
「本当に?」
じっと見つめられ、瞳子はついにせきを切ったように涙を溢れさせた。
「大河さん…。寂しい。本当は寂しくて堪らないの。3週間も会えないなんて、考えただけで私…」
ポロポロと泣きながらしゃくり上げる瞳子を、大河はギュッと胸に抱きしめた。
何度も頭をなでながら瞳子が落ち着くのを待つと、そっと身体を離し、瞳子の涙を親指で拭う。
「瞳子。寂しくなったら我慢しないで、いつでも電話してきて。何時でも構わないから。分かった?」
「うん」
「無理に明るく笑わなくていい。会いたいって、電話で泣いたっていいんだからね」
「うん」
そう言われただけで、瞳子の心はスッと軽くなっていた。
「大河さんが帰ってきてくれるの、楽しみに待ってるね」
「ああ。たくさんお土産買ってくるよ」
「うん!」
子どものようににっこり笑う瞳子に目を細めると、大河はポケットに手を入れた。
最初のコメントを投稿しよう!