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「瞳子。たとえ離れていても、俺はいつだって君のそばにいる。その証に、これを君に贈るよ」
そう言うと、小さなリングケースを開けて見せた。
「これ…」
輝くダイヤモンドの指輪に、瞳子は思わず息を呑む。
「返事はまだしなくていい。だけど、俺がプロポーズするのは生涯ただ一人。瞳子にだけだ」
瞳子の瞳から、再び涙がこぼれ落ちた。
「今はただ、何も言わずにこの指輪を受け取ってくれる?」
すると瞳子は顔を上げて首を横に振る。
「瞳子…?」
大河が戸惑うと、瞳子は指で涙を拭ってから、真っ直ぐに大河を見つめた。
「何も言わずに受け取ることは出来ません」
「…え?それって、どういう?」
「きちんとお返事してから受け取らせてください」
「瞳子…」
大河は驚いたように呟いてから、ふっと頬を緩めた。
「分かった。俺もきちんと言葉にして、この指輪を贈りたい」
そして改めて瞳子に向き直る。
「瞳子。俺は君の綺麗な心が大好きだ。真っ直ぐに俺を見つめてくれる、健気で優しい瞳が大好きだ。今まで一人で懸命に生きてきた君を、これからは必ず俺が守る。もう二度と君を傷つかせたりしない。どんな時もそばにいる。だから安心して、俺のそばにいて欲しい。この先も、ずっと」
自分を射抜くような力強い大河の眼差しに、瞳子は胸を打ち震わせた。
込み上げる涙を堪えると、しっかりと自分の気持ちを言葉にする。
「大河さん。私もあなたの優しい心が大好きです。いつも私を守って抱きしめてくれる、あなたの温かい腕が大好きです。たくさん傷ついて、もう誰も信じられない、これ以上苦しみたくないと嘆いていた私を救ってくれて、ありがとうございました。あなたに癒やされて、私は希望を持てるようになりました。あなたなら信じられる、あなたとなら幸せになれると。大河さん、私をあなたのそばにいさせてください。この先も、ずっと」
大河は頷き、瞳子の両手を優しく握った。
「一生君をそばで守る。結婚しよう、瞳子」
「はい、大河さん」
涙で潤んだ綺麗な瞳で、しっかりと瞳子が答える。
そんな瞳子が堪らなく愛しくなり、大河は胸に抱き寄せた。
「ありがとう、瞳子。これからも君の心を大切にするから。俺を信じて欲しい」
「うん。ありがとう、大河さん」
やがて大河は瞳子の左手を優しく掬い上げ、薬指にゆっくりと指輪をはめた。
「離れていても、この指輪が俺の代わりに君を守ってくれますように」
そう呟くと、指輪にそっと口づける。
瞳子は嬉しそうに指輪に触れて微笑むと、甘えるように大河に抱きついた。
「大河さん、大好き」
頬に涙の跡を残したまま、にっこり笑いかけてくる瞳子に、大河は思わずドキッとする。
「参ったな、イタリアに連れて行きたくて堪らなくなる」
「ふふふ、私もついて行きたくて堪らないです。でも、ちゃんとお留守番してますね。この指輪と一緒に」
「ああ」
笑顔で微笑み合うと、どちらからともなく顔を寄せてキスをする。
言葉に出来ない3週間分の想いを込めて…
二人はいつまでも互いを抱きしめ合い、口づけを交わしていた。
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