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『瞳子ちゃん、元気ー?』
夜、部屋で夕食を食べていると、久しぶりにハルから電話がかかってきた。
「ハルさん!お久しぶりです。元気ですよ。ハルさんもお元気ですか?」
『うん、忙しいけど元気元気!』
「あ、もうすぐハルさんが主演のドラマ、始まりますもんね。楽しみにしてます!もう撮影に入ってるんですか?」
『ありがとう!そうなの、撮影で忙しいけど、今日はどうしても瞳子ちゃんに話しておきたいことがあってね』
えっ?と瞳子は首を傾げる。
「私にお話、ですか?」
なんだろう?と考えてみたが、ハルが口にした言葉は、思いもよらないことだった。
『あのね、私、好きな人が出来たの』
「えっ!ちょ、そんな、好きな人って…」
誰かに聞かれなかったかとキョロキョロしてしまい、自宅だったことを思い出してホッとする。
それにしても、一流芸能人のハルがなぜ自分にそんなトップシークレットを話してくれるのか、そちらの方が気になってしまった。
「あの、どうして私にそれを?」
『ふふふ、その前に相手は誰?って聞いてくれないの?』
「いえ、その…。聞いてもいいのでしょうか?」
『うん。言いたくて電話したんだから』
「じゃあ、えっと。どんな方なんですか?私もテレビで見かける方?」
『テレビでも見かけるけど、瞳子ちゃんなら何度も直接会ってる人よ』
「ええ?!私、芸能人に知り合いなんていませんよ?ハルさんだけです」
『あら、アナウンサーならいるでしょう?』
瞳子はハッとして目を見張る。
「それは、ひょっとして…?」
『そう、アナウンサーの倉木 友也さん。まだ勝手に私が好きになっただけの完全な片想いなんだけどね。今はお互い仕事を頑張る時だと思うから、告白は当分先かな?でもいつか、仕事でも自信が持てるようになって、その時まだ彼がフリーなら想いを伝えたいなって』
ひゃー!と瞳子は思わず頬に手を当てる。
「ハルさん、素敵です!」
『そうかな?ありがとう!この間ドラマの撮影に入る前に、同じ局の倉木さんが取材に来てくれたの。相変わらずこちらに気を遣って、熱心に話を聞いてくれてね。週刊誌の件でその後どうしてるのかなって心配してたけど、以前にも増してキリッと頼もしくて。それで私、コロッと…、惚れちゃいました』
照れたように可愛く口にするハルに、瞳子も胸がときめく。
「可愛い!ハルさん。恋する乙女ですね」
『ふふ、そんなに若くないけどね。でも彼のことを考えると、高校生の頃みたいにキュンとしちゃうの。ドラマの撮影も頑張って、またクランクアップの時にインタビューしに来てくれたらいいなー』
「来てくれますよ、きっと。私も絶対そのインタビューの放送見なくちゃ!」
『やだ、なんだか恥ずかしい。目がハートになってたらどうしよう』
「見てみたいー!恋する乙女になってるハルさん、楽しみにしてますね!」
『ありがとう!瞳子ちゃんは?相変わらずMCの仕事とアートプラネッツのお手伝いをしてるの?』
あ、はい、と瞳子は声を落とす。
『ん?どうかした?』
「あの、えっと。実は私、アートプラネッツの冴島さんと結婚を前提におつき合いをしてまして…」
『えっ、そうなの?!やだー、私より瞳子ちゃんの方が恋する乙女じゃない!そうだったのね、おめでとう!』
「ありがとうございます」
『そっかー。じゃあ私達二人とも、恋のパワーでますます頑張ろうね!』
「はい!またホーラ・ウォッチのイベントでご一緒出来る日を楽しみにしています」
『うん、私も。根掘り葉掘り聞いちゃうからね?覚悟してて』
「あはは…、はい」
じゃあ、またねー!とハルが明るく言って通話を終える。
(そっか、ハルさんが先輩を…。お似合いだな。いつかハルさんの想いが結ばれますように)
瞳子は心からそう願った。
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