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「瞳子、ただいま」
「お帰りなさい、大河さん」
イタリアから帰国した翌朝。
大河は瞳子をマンションまで迎えに来た。
本当は昨日、空港からひと目瞳子に会いに行こうと思っていたのだが、旅行続きで疲れる大河を心配して、自宅でゆっくり休んでと、瞳子が断っていた。
3週間ぶりに会えた喜びに、二人は玄関でギュッと抱き合う。
胸がじんわりと温かくなり、幸せが込み上げてきた。
「やっと会えた。これから3日間は絶対に離さないからな」
「うん」
目を潤ませる瞳子に、大河は優しくキスをする。
ずっとこうしていたいが、ここにいる必要はない。
これから二人で一緒に幸せな時間を過ごすのだから。
「じゃあ、行こうか」
「はい!」
大河は瞳子の荷物を持つと、もう片方の手でしっかりと瞳子の手を握る。
停めてあった車に乗り込むと、羽田空港に向かった。
「大河さん、また空港に戻っちゃいましたね」
「ははは!そうだな。でも瞳子と一緒に飛行機に乗りたいって思ってたから、嬉しいよ」
スマートにチェックインを済ませると、搭乗ゲートに移動する。
「わあ、飛行機!大きいな、かっこいい」
瞳子は無邪気に窓に近寄り、目を輝かせた。
つられて大河も飛行機に見とれる。
(昨日も乗ったばかりなのに、瞳子と一緒だと新鮮に感じるな)
搭乗開始の時間になると、瞳子は大河の手を引っ張って、早く行こう!と子どものように急かす。
大河はふっと笑みを洩らしながらも、周りの視線を感じていた。
瞳子はやはり、皆の注目を一身に集めている。
スタイル抜群の長身の美女が、旅行のオシャレな装いで、しかも楽しそうに生き生きと顔を輝かせているのだ。
否が応でも目を奪われてしまうのだろう。
誰もが瞳子を振り返り、ヒソヒソと小声で「すごい美人」「いい女だな」などと話していた。
大河は改めて、旅行中ひとときも瞳子のそばを離れまいと、心に留めた。
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