旅行

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「わあ、飛んだ!気持ちいい!雲の中をあっという間に抜けるんですね」 窓に張り付いて空を眺めている瞳子に、大河はクスッと笑う。 「瞳子。今からそんなだと、夜まで持たないぞ?」 「だって楽しいんですもん。大丈夫、夜までずーっとワクワクしたままですから」 瞳子の笑顔に見とれているうちに、あっという間に到着した。 降り立った場所は…。 「着いたー、神戸!」 瞳子は両手を挙げて喜ぶ。 今回の旅行先を迷っていた瞳子に、大河は、関西はどう?と提案したのだった。 お好み焼きが好き、と前に瞳子が話していたのを思い出したからだ。 滞在は神戸にして、そこから大阪にも足を伸ばして本場のお好み焼きを食べに行かないか?と聞いてみた。 瞳子としても、大河が疲れないようあまり遠出をするつもりはなかったから、飛行機で1時間程の神戸はちょうど良いと思って決めた。 まずは神戸空港からポートライナーに乗り、ホテルに移動する。 「これ無人で動くんですね。あ!大河さん、一番前の席が空いてる!運転手さんみたい」 海の上を走る電車に、瞳子は身を乗り出して景色を楽しむ。 だが、あっという間にホテルの最寄り駅に到着した。 「ええー?もう降りるの?」 「また何回でも乗ればいいさ。ほら、行くぞ」 後ろ髪を引かれている瞳子を促し、改札を出てすぐのホテルに入る。 チェックインにはまだ早い為、荷物だけ預けるとまた外に出た。 「よし、じゃあ早速出かけますか」 「やったー!」 二人は手を繋ぎ、歩いて15分程の海沿いの公園に向かった。 「わあ、綺麗な海!こんな所に大学が?なんて素敵なの」 瞳子は両手を広げて胸いっぱいに深呼吸する。 「あ!大河さん、あった!BE KOBE!」 海をバックに、オシャレなアルファベットのモニュメントが映えている。 瞳子はスマートフォンの角度を変えながら、何枚も写真を撮った。 「すごい、どれも絵になるわー。プロが撮ったみたい」 しみじみと自分が撮った写真を見返す瞳子に、大河は立ち位置を指示する。 「瞳子、そこに立って海の方を見てて」 「え?うん」 言われた通りに立ち、遠くに目をやっていると、後ろから何枚も大河がシャッターを切る音がする。 「うわっ、マジでこれすごい。イケてる!行き過ぎてる!瞳子、今度はムービー撮るから、こっちから向こうに歩いて行って」 「ええー?!」 いつの間にか自分よりも遥かに興奮気味の大河に、瞳子は言われるがまま歩き出す。 「いいなー、うん。いいぞ、瞳子。あ、もう少しゆっくり…そう。ちょっと立ち止まって、そのまま振り返って…。ああっ、いい!風に髪がなびいて最高!」 「ちょっと、大河さん。みんな見てて恥ずかしいから」 遠巻きに見物され、瞳子は思わず会釈する。 「ほら、もう行きましょう。あ!その前に」 大河の手を引いた瞳子は、スマートフォンが置ける撮影台があるのに気づき、タイマーで大河と二人の写真を撮った。 「ふふっ。大河さんとのツーショット、初めて。オシャレな写真で嬉しい」 満足した二人は、再びポートライナーに乗って移動した。
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