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「神戸って、海のイメージが強かったですけど、山も綺麗に見えるんですね」
「ああ。六甲山から見下ろすと、街と海が綺麗に見渡せる。夜の神戸の輝きは『100万ドルの夜景』と呼ばれているんだ」
「わあ、素敵!見たいなあ」
「ロープウェイで上がった所にハーブ園がある。ナイター営業もやってるから、今夜見に行こうか?」
「うん!行きたい」
それまでは、気の向くままに街を探索することにして、まずは元町の旧居留地にあるカフェに行く。
ミラノスタイルのイタリアンバールを再現した店内は、格調高い雰囲気で、本当にここは日本かと思わされる。
広々としたオープンテラスも異国情緒たっぷりで、二人は天気の良さに誘われて外で食べることにした。
「不思議。なんだか大河さんと外国に来たみたい」
「ああ、そうだな。どこを切り取っても絵になる街だ」
そう言うと、またアーティスト魂に火がついたのか、大河は何枚も瞳子の写真を撮る。
伏し目がちでカフェラテを飲む様子。
軽く頬杖をついて遠くを眺めている横顔。
背景のアーチや柱もオシャレで、写真だけ見ると、ここが日本だとはとても思えない。
すると周りの人の囁く声が聞こえてきた。
「めっちゃかっこええなあ、あの二人。芸能人カップルやで」
「え、ほんまに?」
「そうやって。あんなイケメンと美女、凡人におるか?」
「せやな。テレビで見たことある気がするわ」
「そうなんや!」
「うん。知らんけど」
ぶっと思わず大河は吹き出す。
(知らんけどって…。なんちゅー無責任な)
街はオシャレだが、会話は関西弁で面白い。
「神戸っていいな」
思わず呟くと、瞳子が、ん?と首を傾げる。
「何か言いました?」
「いや。瞳子とこの街に来られて良かったなって」
「ふふっ、私も嬉しいです。大河さん、次はハーバーランドに行きましょ!」
「ああ」
海沿いのショッピングモールで買い物を楽しみ、ベンチに座って船を眺める。
夜は新神戸のホテルで美味しい神戸牛を味わい、最後にロープウェイでハーブ園に上がった。
「なんて綺麗なの…。星空がそのまま下りてきたみたい」
眼下に広がる散りばめられた輝きに、瞳子はうっとりと両手を組む。
「この景色をずっと忘れないでいます。大河さんと一緒に見た、幸せな夜の景色を」
大河は優しく瞳子に微笑むと、そっと肩を抱き寄せる。
二人はいつまでも身を寄せ合い、美しい夜景と幸せな時間に酔いしれていた。
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