あなたになら

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「なに?どういうこと?そりゃあね、私も半信半疑でしたよ。一緒に旅行するってことは、つまり、そういうことになるかも?でも、今回はまだかも?って。だけどね、まさか別の部屋だとは思いませんでしたよ」 バスタブの湯に浸かりながら、瞳子はブツブツとひとりごちる。 「それにさ。カップルで旅行って言ったら、夜が一番ロマンチックでしょ?お部屋に二人切りで、時間も気にせずゆっくり過ごせる訳じゃない。それなのにあっさり、おやすみーって、あんまりよね。え?私がおかしい?私の認識が間違ってますか?世の中の女性の皆様!」 だんだん司会者の口調になってくる。 「私、こう言っては何ですが、ホテルに着いてからちょっぴり緊張しておりました。高鳴る胸、赤らむ頬。それはもう、恋する乙女そのものでしたよ。ついでに申しますと、わたくし、この旅行の為に下着を新調いたしました。もしかして、もしかするかも?と淡い期待を寄せていたからであります。別にそうならなかったとしても、それはそれでいいんですよ。だけれども!別の部屋はあんまりじゃないですか?うわーん。スイートルームのバカー!狭くても一つのベッドにくっついて寝たかったよー」 大声で語っているうちに、本当に涙が込み上げてきた。 「うっうっ、せっかく楽しい旅行だったのに。まさかの夜にこんなことに…。ううん。このまま泣き寝入りはしたくない!大河さんに、くっついて寝てもいいか聞いてみよう!」 瞳子はキッと顔を上げると、ザバッと勢い良くバスタブから立ち上がった。
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