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「おめでとう!洋平。幸せにな」
「おめでとうございます、洋平さん。素敵な奥様ですね。どうぞお幸せに」
花嫁と腕を組み、バージンロードを歩いて行く洋平に、大河と瞳子は祝福の言葉をかけた。
「ありがとう!大河、瞳子ちゃん」
タキシードに身を包み、いつにも増してキリッとした顔つきの洋平は、吾郎や透にも声をかけられ笑顔で応える。
アートプラネッツが海外からの招致で忙しくなるのを前に、洋平の結婚式が執り行われていた。
洋平が初めて本気で惚れたという花嫁は、5歳年上の知的で綺麗な女性。
チャペルの外で、皆の祝福を受けて微笑む新郎新婦に、瞳子はうっとりと見とれた。
「お似合いだなあ、お二人。奥様はクールビューティーで、洋平さんもかっこいいし。とっても幸せそうですね」
ああ、そうだな、と相槌を打ちながら、大河は瞳子の肩を抱く手を緩めずに、周囲に目を光らせる。
「大河さん?さっきから何をソワソワしてるんですか?」
「瞳子がさらわれそうで心配なんだ」
…は?と瞳子は眉根を寄せる。
「こんな白昼堂々と、誘拐ですか?」
「そうだ。みんなが瞳子を狙ってる」
「何を言ってるんですか?また刑事ごっこ?」
「違うっつーの!瞳子に言い寄ろうとしてる男共が大勢いるんだ。なにせ、今日の瞳子は格別に綺麗だからな。ワンピースだぞ?反則だ!」
「…はい?」
瞳子は呆れて言葉が出てこない。
確かに今日はいつものパンツスタイルではなく、結婚式のゲストとして、華やかなワンピースを着てきた。
だが、主役はなんと言っても花嫁だ。
自分のことなど、誰も見てはいないと瞳子は思っていた。
それに、左手にはエンゲージリングが光っているし、大河は常に自分の肩を抱き寄せている。
どこに誰かがつけ入る隙があるのだろうか。
「瞳子、今日は絶対に俺から離れるなよ」
「トイレに行きたくなったらどうすればいいですか?」
「我慢しろ」
「そんな無茶な!」
瞳子が抗議していると、後ろから「やれやれ…」と吾郎と透の声がした。
「大河、そんなに心配ならお前もさっさと結婚しろ」
「そうだよ。アリシアが俺に心変わりしても知らないぞ?」
今はまだ独身だもんねー、と瞳子に笑いかける透に、大河はムキーッと敵意を丸出しにする。
「瞳子はやらん!絶対にお前の嫁にはやらんからな!」
「大河、それ娘を持つ父親のセリフだよ」
透が呆れると、吾郎も頷く。
「確かに。お前、瞳子ちゃんのお父さんにそう言われたのか?」
大河はハッとしてから、しょんぼりとうつむく。
「言われてない。けど、言われたらどうしよう…」
「あー、まだ挨拶に行ってないのか。ま、覚悟しておくんだな」
「健闘を祈る!」
吾郎と透は大河の肩を叩いてから去っていった。
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