刑事の登場

1/5
前へ
/195ページ
次へ

刑事の登場

「瞳子さん、瞳子さん?瞳子さーん!」 「わっ!びっくりしたー。何?亜由美ちゃん」 「何じゃないですよ。魂、どこに行っちゃってたんですか?」 「えっと、ちょっとそこまで」 「嘘ですよ。宇宙の彼方に行ってましたよね?」 「無事に地球に帰って来ました」 あはは!と亜由美は明るく笑う。 「それなら良かったです。ね、瞳子さん。今度私とデートしてくれません?」 「あれ?亜由美ちゃん、彼氏はどうしたの?」 すると途端に亜由美は目をウルウルさせながら、瞳子にガバッと抱きついてきた。 「別れちゃったんですー!だから瞳子さんに話聞いて欲しくて。ね?私とデートしてくださーい!」 「わ、分かった。分かったから、亜由美ちゃん、ちょっと手を緩めて。首が締まる…うぐっ」 「あ、ごめんなさーい」 ケロッとして亜由美は瞳子から手を離す。 「じゃあ、今度休みが合う時に行きましょ!場所はどこがいいかなー」 人差し指を口元に当てて宙を見ながら考え始めた亜由美に、千秋がデスクから声をかける。 「亜由美、早く業務報告入力してね。あ、オススメのレストラン情報じゃないわよ?」 「はーい、分かってますって」 ウキウキとパソコンに向かいながら、亜由美はまた瞳子に話しかけてきた。 「瞳子さん、横浜のみなとみらいにしませんか?桜並木が綺麗に見えるレストランがあるの、思い出したんです」 「こーらー、亜由美!ほんとに業務報告書いてるの?」 「書いてますよー。私、手と口は別のこと出来るんです」 「どうだか」 千秋は呆れたように腕を組んでため息をつく。 そんな二人のやり取りにクスッと笑ってから、瞳子も自分の仕事に集中した。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6067人が本棚に入れています
本棚に追加