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「ね、瞳子さん。最近何かあったんですか?」
2週間後。
二人の休みが合う日に、瞳子は亜由美と一緒にみなとみらいのホテルにあるレストランに来ていた。
2階の窓から満開の桜並木が見え、瞳子は思わずうっとりしながら美味しいフレンチ料理を味わう。
亜由美は、初めこそ彼氏と別れた時の話をダーッと瞳子に話して聞かせたが、全部話すとスッキリしたのか、デザートを食べる頃には落ち着いていた。
紅茶のカップを持ち上げて、亜由美が再び瞳子に尋ねる。
「瞳子さん、悩みごとあるんじゃないですか?どうかしました?」
「え?別にないけど」
「嘘ですよ。だっていっつも魂、第三惑星まで行ってますよね?」
「第三惑星?ってどこ?」
「だから、瞳子さんの魂の故郷」
「ええ?私、第三惑星に住んでたの?いつの間に?」
「案外、覚えてないもんですよねー。それで?何があったんですか?」
「それは第三惑星でってこと?」
「ううん。この地球で、です」
真面目な顔で聞いてくる亜由美に、瞳子の頭はこんがらがる。
「地球での私の記憶が確かなら、これと言って何もなかったと思うけど?」
「じゃあ質問変えます。ボーッとしてる時、何を考えてますか?」
「え、何も考えてないからボーッとしてるんだと思うけど?」
すると亜由美は、ムキーッと顔をクシャクシャにして怒る。
「もう、会話が全然噛み合わない!」
それは私のセリフだけど…と瞳子は独りごちる。
「まあ、いいや!瞳子さん、最近少し元気なさそうに見えたんです。それに私も彼と別れて落ち込んでたし。今日は二人でパーッと遊びましょ!」
亜由美はレストランを出ると、早速ホテルのすぐ前の遊園地に瞳子を連れて行く。
「瞳子さん、あれ乗りましょ!」
「えー?なんか、グルグルして怖そうなんだけど」
「大丈夫!キャーッて叫んでうっぷん晴らししましょ!」
手を引かれて、瞳子は仕方なく亜由美と一緒に、遠心力で飛ばされそうな乗り物に乗る。
「ギャー!怖いー!」
「あはは!たのしーい!」
「いやー!止めてー!」
「ヤッホー!気持ちいいー!」
セリフはともかく、二人とも大声で叫んで気分もスッキリする。
「あー、面白かった!瞳子さん、次はあれね」
またいくつかの乗り物で叫び、そのあとは隣のショッピングモールで買い物を楽しむ。
気づくと辺りはすっかり夜になっていた。
「少し早いけど、夕食も食べて行きましょうよ」
亜由美に言われて、居酒屋に入る。
お酒を飲みながら、尽きることのない亜由美の話を聞き、瞳子はいつの間にか心が軽くなっているのに気づいた。
「あー、今日は楽しかった!瞳子さん、デートしてくれてありがとうございました!」
「ううん、こちらこそ。私もとっても楽しかった。ありがとね、亜由美ちゃん」
「ふふっ、どういたしまして。たまには女同士のデートもいいですね。またつき合ってくださいね」
「うん!」
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