刑事の登場

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地下鉄で帰る亜由美と駅前で別れ、瞳子は私鉄の駅へと歩き始めた。 (はあ、疲れたけど楽しかったな) 瞳子は思わず笑みをこぼす。 亜由美に振り回されて身体はクタクタだが、心は晴れやかだった。 (やっぱり私、悩んでたのかな?) 亜由美に聞かれた時は、特に悩んでいないと思っていたが、思い返して見ると確かにぼんやりと考えてしまうことが増えた。 考えごととは、やはり友也のことだ。 友也は、もしもう一度どこかで偶然再会出来たら、その時は返事を聞かせて欲しいと言っていた。 だが、偶然会う機会など、もう二度とない気がする。 つまり返事をしなくてもいい。 だから思い悩む必要もないのだ。 そう自分に言い聞かせながらも、瞳子は自宅マンションの部屋でクローゼットを開ける度に、ため息をついていた。 そこにあるのは、クリーニングに出してからしまってある、友也のジャケット。 毎回ふと目に入り、友也を思い出してしまっていた。
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