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「ひゃー、かっこいい!素敵!まるでハリウッドスターカップル!ちょっと待って、写真撮りたい!」
千秋は興奮気味に瞳子と大河の写真を撮る。
瞳子は困惑しながら、鏡の中の自分を見た。
(ほんとにこれで表に出るの?)
鏡に映るのは、ブロンズヘアにサングラスの外国人…にみえる自分だった。
大河が千秋にモデルの衣装を貸して欲しいと頼み、千秋は嬉々として二人のコーディネートを考えた。
瞳子はブロンズの、大河は明るいブラウンのウイッグを着け、二人とも大きなサングラスをかける。
首周りが大きく開いたタンクトップの上に、サラリとオーバーサイズのジャケットを羽織ったラフなスタイルで揃え、更に瞳子はスキニーパンツに8cmヒールのパンプスを履く。
デコルテを露わにし、いつもはひた隠しにしている胸も強調した。
こんな格好、恥ずかしくて無理だ、と言ってみたのだが、これくらいしないと瞳子だとバレると言われて、仕方なく引き下がった。
手配したタクシーがビルの前に止まると、行くぞ、と大河が声をかける。
「行ってらっしゃーい!ぐふふっ」
不気味な笑みをこぼす千秋に見送られ、瞳子は大河と共にエレベーターを使って1階に下りた。
正面玄関から外に出た途端、わーっとマスコミのカメラマンや記者達に取り囲まれる。
「オフィス フォーシーズンズのモデルさんですか?間宮 瞳子さんをご存知で?」
「ここに倉木 友也が来たことはありませんか?」
「二人について、何か知ってますか?」
「あの二人、つき合ってるんですよね?」
一斉にマイクとカメラを向けられて、瞳子は立ちすくむ。
すると大河がにこやかに皆に笑いかけた。
「Excuse us! Sorry, we can't speak Japanese」
あ…、と記者達は一様にひるんで道を空ける。
「Thank you!」
にっこりと笑顔で歩き始めた大河は、ふと瞳子を振り返った。
「Hey, アリシア。Are you OK?」
「イ、イエース」
瞳子はぎくしゃくと歩を進めると、大河に促されてタクシーに乗り込む。
こうして瞳子は、見事マスコミの目をかいくぐって脱出に成功したのだった。
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