6166人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
「それで、これが今取り組んでる次回作なんだ。夏休みに開催する子ども向けのミュージアム。テーマは、水とか海にしようかなと思ってる」
パソコンを操作しながら、透が瞳子にいくつかの動画を見せてくれる。
「なるほど。綺麗な水色や川のせせらぎが、涼しげでいいですね。海をテーマにすると、魚や生き物にも広げられそうです。ほら、子ども達のお絵描きをスキャナーで映像に反映させられるでしょう?」
「ああ、確かに。あのコーナーは海をテーマにした方が良さそうだね」
「はい。子ども達の絵で、海が色んな生き物でいっぱいになるのを見てみたいです」
「ウーパールーパーとかも泳ぐかもね?」
「あはは!楽しそう」
明るく笑う瞳子に安心してから、大河はネットニュースを密かにチェックする。
敢えて瞳子にテレビを見せないようにしながら、記事の反響を調べていた。
やはり今一番人気のイケメンアナの熱愛発覚とあって、ネットでは多くのコメントが飛び交っている。
週刊誌の記事では、もちろん瞳子の実名は伏せられているし顔にもモザイクがかかっているが、一般人のSNSでは、既に顔がはっきり分かる写真が名前と共に挙げられていた。
『倉木アナの彼女、これだよね。ホーラ・ウォッチのイベントで谷崎 ハルとトークショーしてた間宮 瞳子って人』
『なんかやたら背が高くて、胸もデカそう。エロいなー。しかもハーフっぽい?羨ましいぞ、倉木!』
『えー、倉木アナってこんな趣味なの?もっと清楚で可愛らしい子が好きなのかと思ってたー。なんかガッカリ』
『この女がたらし込んだんじゃないの?派手で軽そうだもん』
『だよな。爽やかなイケメンアナも、お色気にコロッといっちまったか』
次々と書き込まれるコメントに、大河はギリッと奥歯を噛みしめる。
(何も知らないくせに、好き勝手書きやがって)
今、自分の目の前にいる笑顔の瞳子は、およそそんなふうに言われる子ではない。
(こんなコメントを彼女に見せる訳にはいかない)
なるべく気を逸して仕事の話をしようと、大河はスマートフォンの画面を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!