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やがて透がぽつりと呟いた。
「瞳子ちゃん、倉木アナとどういう関係なんだろう」
大河はゆっくりと口を開く。
「彼女は、記事の内容は事実無根だと言っていた。倉木アナの恋人ではないと」
「だけど、それならどうしてレセプションパーティーを二人で抜けたの?外のベンチに二人並んで、何を話してたの?倉木アナは瞳子ちゃんに自分のジャケットまで貸してさ。この記事がここまで騒がれるのは、みんなそれが気になってるからだと思う」
重苦しい沈黙が広がる。
今まで黙っていた吾郎が、低い声で話し始めた。
「瞳子ちゃんが倉木アナと以前から知り合いだったのか、もしくはあの日に知り合って意気投合したのか。どちらにせよ、ジャケットを彼女に掛けた倉木アナは、瞳子ちゃんに好意を寄せているように見えるな。この騒動は、倉木アナが何らかのコメントを出すまでくすぶりそうだ」
「そしたら瞳子ちゃんは、それまでずっとマスコミに追いかけられるってことか?たまったもんじゃないな」
そう言うと透はソファにもたれてため息をつく。
「倉木アナがコメントを出すとしたら…。SNSに倉木アナのアカウントあるか?」
洋平の言葉に、皆は一斉にスマートフォンを取り出した。
「あ、1個あるね。うわっ!炎上してる」
皆も同じ画面を見て顔をしかめる。
倉木の最後の投稿は、アートプラネッツのミュージアム、プレオープンイベントの様子を書いたものだった。
『今までにない、新たな世界が体験出来る素晴らしいミュージアム!見て、触れて、感じて、子ども達も大いに楽しんでいます』
その記事に、矢継ぎ早に書き込まれるコメント。
『倉木さんよー、このあと彼女とよろしくしちゃったんですかー?』
『仕事で行ったの?それともデート?』
『見て、触れて、感じてってwww』
『何やってたんですか?やらしー』
『あーらら。爽やかなイケメンアナがこんなふしだらな穴だったなんてね』
それ以上読むのは耐えられず、4人は画面を閉じた。
「くそっ!酷いこと書きやがって」
「誹謗中傷ってやつだな。匿名で書かずに、顔見せて名前名乗って堂々と言ってみろ!ってんだ」
「倉木アナがお前に何かしたのかよ?単なるストレス発散に軽々しく人を傷つけておいて、しれっとしてる。許せんな」
忌々しそうに言う3人に、大河は黙って考え込む。
「それで大河。これからどうするつもりだ?」
3人に注目されて、大河はおもむろに顔を上げた。
「今はとにかく彼女を守る。マスコミの接触だけでなく、心無いコメントからもな。ニュースやネットも、なるべく彼女の目には触れないようにしてくれ。それから夜は交代でここに泊まって欲しい。彼女のそばには、いつも誰かがいた方がいいと思う。それと食事の買い出しも頼む」
分かった、と3人は頷く。
「あとは倉木アナがどう出るか、だな。彼女に連絡してくるかもしれないし。二人がどういう関係か分からないから、気にかけておくしか出来ないが」
「そうだな。とにかく瞳子ちゃんが心穏やかに過ごせるようにしてあげよう」
ああ、と皆は頷き合った。
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