アリシア

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ピコン!とメッセージを受信して、大河はさり気なくスマートフォンを手に取る。 なぜだが赤い顔の透と一緒にパソコンの前に座っている瞳子に目をやってから、そっとメッセージを確認した。 見ると、1時間前に出かけた吾郎から2枚の写真が届いている。 大河は吾郎に、千秋の事務所の様子と、千秋から聞いた瞳子の自宅マンションの様子を見てきて欲しいと頼んであった。 届いた2枚の写真は、どちらも大勢のマスコミが写っていて、建物の入り口が確認出来ない程だった。 (ざっと見ても30人はいるな) これでは当分、瞳子は事務所にも自宅にも近寄れない。 大河は、Thank you!のスタンプを押して画面を閉じると、再び倉木 友也のSNSを確認してみた。 本人の新しい投稿はなく、誹謗中傷と言えるコメントだけが大量に増えていて心が痛む。 (そう言えば、倉木アナの番組ってどうなってるんだろう) 詳しくはないが、確か彼は土曜日のスポーツ番組を担当しているはず。 他には、夕方のニュース番組でリポーターとして出演しているのを見たことがあった。 (リポーターはしばらく控えるだろうな。スポーツ番組はメインMCだから、簡単には休めないか。そこで何かコメントを発表するかも?) 今日は火曜日。 土曜日までは4日ある。 (テレビ局が火消しに動いてくれればいいのに) そう思ってホームページを見てみたが、それらしき記載は見当たらなかった。 そうこうしているうちに夕方になり、吾郎や、ミュージアムのフォローに行っていた洋平もオフィスに戻って来た。 「夕食も何かデリバリー頼もうか。何にする?」 透が皆に声をかける。 「んー、俺、中華が食べたい」 「おっ、いいな。オードブルで頼むか?」 「そうだな」 吾郎の案に皆が賛成し、透は最後に瞳子を振り返った。 「アリシアも、それでいいかい?」 …はっ?!と、皆は鳩が豆鉄砲食ったような顔になる。 「透、なにその安っちい海外ドラマの吹き替えみたいな口調は」 「ほんとだよ。ハイスクールなんとかって学園ドラマの、おちゃらけキャラかよ?」 瞳子も困惑しながら苦笑いを浮かべている。 「まあまあ、いいってことよ。じゃあ中華で決まりな」 透はスマートフォンでサクサクとオーダーを済ませた。
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