素敵な日

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「はあ、美味しかった。もう大満足です」 最後のシャーペットを食べ終えて、瞳子が笑顔でお礼を言う。 「皆さん、今日は本当にありがとうございました。とっても素敵なひとときでした」 「どういたしまして。でも喜ぶのはまだ早いよ、アリシア」 「え?まだ早いって…?」 透の言葉に首を傾げた時、またノックの音がしてスタッフが入って来た。 手にしていた丸い皿を瞳子の前に置くと、かぶせてあったカバーをスッと持ち上げる。 瞳子は目を見開いて口元に手をやった。 皿の上にはイチゴが並んだ生クリームのホールケーキ。 そしてチョコプレートに書かれた文字は… 『Happy Birthday!』 (ど、どうして…) スタッフが出て行くと、驚く瞳子に皆が笑いかける。 「誕生日おめでとう!瞳子ちゃん」 「あの、なぜそれを?」 「千秋さんだよ。もうすぐ君の誕生日なのに、オフィスに缶詰めなのは忍びないって」 「千秋さんが?」 「そ!だから俺達、こうやって計画立てたんだ。君の誕生日を楽しい日にしたくてね」 「そんな、皆さん…私の為に?」 瞳子は涙が込み上げてきた。 「ほら、ロウソク吹き消して」 「あ、はい」 瞳子は5本並んだロウソクを一気に吹き消す。 「25歳おめでとう!瞳子ちゃん」 「ありがとうございます。嬉しい、本当に。皆さん、ありがとうございました」 感極まって涙ぐむ瞳子に、おいおいと大河が口を開く。 「泣くなよ。千秋さんに写真送るからな。ほら、笑って」 4人は瞳子の周りにギュッと顔を寄せ合い、大河が腕を伸ばしてスマートフォンで自撮りした。 早速、皆で画面を覗き込む。 「あはは!最高に笑えるな、この写真」 「ほんと!吾郎、何だよこの攻めたポーズは」 「伝説のロックスターって設定だからな」 「どう見ても売れないコメディアンだよ!」 皆の真ん中で輝くような笑顔をみせる瞳子を、大河はふっと笑みを洩らして優しく見守っていた。
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