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「あの、大河さん」
コーヒーをデスクに置いてから、瞳子が控えめに声をかける。
「ん?どうした」
「はい。あの、こちらにお世話になってもう2週間になります。私、そろそろマンションに戻りますね。これ以上、皆様にご迷惑をおかけする訳にはいきませんから」
「迷惑だとは誰も思っていない。それにマスコミが完全に取材を諦めたとは限らないし、まだしばらくは動かない方がいい」
「ですが、皆さんをソファで寝かせてしまうのも申し訳なくて。私がソファに寝ますって言っても、頑なに断られてしまいますし。それにゴールデンウィークのクロージングセレモニーと、新しいお台場のミュージアムに向けて、ますます忙しくなりますよね?作業が立て込んで、仮眠室を利用される日もあると思います」
「気にすることはない。みんな結局ソファでうたた寝して、仮眠室はほぼシャワーしか使わないからな。それにこのソファ、フルフラットにすれば寝心地も最高なんだ。俺、ソファは座り心地よりも寝心地で選んだから」
「そうなんですか?!」
うん、と頷いて立ち上がり、大河はソファの背もたれをグイッと内側に倒してから、一気に外側へと平面に開いた。
「わあ、広い!」
「だろ?これが2台あるから、くっつけたら二人でも充分寝られ…」
そこまで言って、思わずハッとする。
(な、何を言ってるんだ?俺は。二人で寝るって、誰と誰がだよ?)
「大河さん、寝転んでみてもいいですか?」
「あ、ああ、うん」
すると瞳子は、コロンとソファに横になり、わー、気持ちいい!と両手を挙げる。
「オフィスを眺めながら横になるって不思議。でもすごく寝心地いいです」
「ああ。俺、自分のマンションのベッドより、ここのソファの方がよく眠れる」
「そうなんですか?ふふっ。それにしても、こうやって見ると、本当にオシャレなオフィスですよね。天井のライトも凝ってるなあ」
眩しそうに目を細めた瞳子は、そのままスーッと眠りに落ちていった。
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