ここを出る日

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「…え?ちょっと、おい!」 あっという間にスヤスヤと眠り始めた瞳子に驚いて、大河は思わず顔を覗き込む。 (そうか、夕べは洋平と一緒で寝不足だったからか) 何をしていて寝不足になったのだろう…と考えたところで、また顔が火照り出す。 いかん!と慌てて頭を振ると、隣の部屋からブランケットを持ってきて、そっと瞳子に掛けた。 オフィスの照明を絞ってから、静かにデスクでやり残した仕事をする。 カチカチとマウスをクリックしながら、どうしても視界に入る瞳子が気になってしまった。 (倉木アナと1年半つき合ったと言っていたっけ。どうして別れたんだろう?倉木アナの様子からすると、今でも彼女のことを大切に想っているんじゃないだろうか) それに爽やかなイケメンアナの倉木と、モデル顔負けのスタイルの良い瞳子は、どう見てもお似合いの二人だった。 外見だけではなく、性格や雰囲気も似ている。 (どちらから別れを切り出したのかは分からないが、いずれにせよ、互いを想いながら別れることになったのではないだろうか) これと言った根拠もなく、ただ何となくそんな気がした。 するとその時、瞳子が、んっ…と甘い声を洩らしながら寝返りを打ち、こちらに顔を向けた。 白い肌にサラサラの柔らかそうな栗色の髪。 前髪から覗く形の良い額と、スッと通った綺麗な鼻筋。 頬はほんのりピンク色に染まり、艷やかな唇はふっくらしてとても色っぽい。 (ヤバイ、見てはいかん) 大河は慌てて視線を逸らすと、パソコン作業に集中した。
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