ここを出る日

7/7

6174人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
「大河さん、大河さん?」 「…ん」 「大河さん、起きてください」 瞳子に肩を揺すられ、大河はゆっくりと目を開ける。 「おはようございます。すみません、大河さん。私がソファで寝てしまったばっかりに、大河さんがデスクで寝る羽目になってしまって…」 「ああ、そうか。いや、大丈夫だ。いつものことだし」 大河は身体を起こすと、うーん…と伸びをする。 「もう6時か。シャワー借りてもいい?」 「はい、もちろんです。朝食も用意しておきますね」 「サンキュー」 シャワーを済ませると、瞳子がピザトーストとコーヒーとサラダを用意して待っていた。 「大河さん、本当にすみません。私がここにいたのでは、皆さんちゃんと寝られませんよね?やっぱり私、すぐにでも自宅に帰ります」 「またそれか。気にしなくていいってば。それにもう少しマスコミの動きを確認してからの方がいい。千秋さんに事務所の様子を聞いて、あとは吾郎にも君のマンションに見に行ってもらうから、とにかく少し待って」 そう言うと、瞳子は少しうつむいてから、コクンと頷く。 「本当に俺達に気を遣う必要はないからな?透はもちろん、洋平も吾郎も君がいてくれて助かってる。仕事のアドバイスもくれるし、最近は美味しい食事も作ってくれてるだろ?」 宅配メニューばかりなのが気になって、瞳子は簡単な食事を作るようになっていたが、そんな程度でお世話になっていることのお返しにはならないと、瞳子は首を振る。 「とにかく少しでも早く出て行きますね」 「だーかーら、気にするなってば」 何度言っても納得しない瞳子に、大河はやれやれとため息をついた。 「でも、そうだな。いつまでもここにいるのも息が詰まるか。それならせめて、ゴールデンウィークのクロージングセレモニーが終わるまでは手伝ってくれないか?猫の手も借りたいくらい忙しくなるから、君がいてくれると助かる」 「はい!それはもちろん」 「良かった。その後マスコミの張り込みがいなくなってるのを確認したら、君を自宅マンションまで送り届けるよ」 「ありがとうございます!それまでは精いっぱいお手伝い致します」 「ああ」 ようやく笑顔になった瞳子に、大河も頬を緩めて頷いた。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6174人が本棚に入れています
本棚に追加