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「大河さん、大河さん?」
「…ん」
「大河さん、起きてください」
瞳子に肩を揺すられ、大河はゆっくりと目を開ける。
「おはようございます。すみません、大河さん。私がソファで寝てしまったばっかりに、大河さんがデスクで寝る羽目になってしまって…」
「ああ、そうか。いや、大丈夫だ。いつものことだし」
大河は身体を起こすと、うーん…と伸びをする。
「もう6時か。シャワー借りてもいい?」
「はい、もちろんです。朝食も用意しておきますね」
「サンキュー」
シャワーを済ませると、瞳子がピザトーストとコーヒーとサラダを用意して待っていた。
「大河さん、本当にすみません。私がここにいたのでは、皆さんちゃんと寝られませんよね?やっぱり私、すぐにでも自宅に帰ります」
「またそれか。気にしなくていいってば。それにもう少しマスコミの動きを確認してからの方がいい。千秋さんに事務所の様子を聞いて、あとは吾郎にも君のマンションに見に行ってもらうから、とにかく少し待って」
そう言うと、瞳子は少しうつむいてから、コクンと頷く。
「本当に俺達に気を遣う必要はないからな?透はもちろん、洋平も吾郎も君がいてくれて助かってる。仕事のアドバイスもくれるし、最近は美味しい食事も作ってくれてるだろ?」
宅配メニューばかりなのが気になって、瞳子は簡単な食事を作るようになっていたが、そんな程度でお世話になっていることのお返しにはならないと、瞳子は首を振る。
「とにかく少しでも早く出て行きますね」
「だーかーら、気にするなってば」
何度言っても納得しない瞳子に、大河はやれやれとため息をついた。
「でも、そうだな。いつまでもここにいるのも息が詰まるか。それならせめて、ゴールデンウィークのクロージングセレモニーが終わるまでは手伝ってくれないか?猫の手も借りたいくらい忙しくなるから、君がいてくれると助かる」
「はい!それはもちろん」
「良かった。その後マスコミの張り込みがいなくなってるのを確認したら、君を自宅マンションまで送り届けるよ」
「ありがとうございます!それまでは精いっぱいお手伝い致します」
「ああ」
ようやく笑顔になった瞳子に、大河も頬を緩めて頷いた。
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