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蘇る恐怖心
「瞳子ちゃん、タイムスケジュール確認してプリントアウトしておいてくれる?あと、ゲストリストとノベルティのチェックもお願い」
「かしこまりました」
「司会原稿、ひと通り出来上がってたら見せてくれる?」
「はい、ただ今」
吾郎や洋平に返事をしながら、瞳子は次々と資料に手を伸ばす。
世間はゴールデンウィークに突入し、ミュージアムも終了間近とあって、来場者数は最高人数を更新し続ける毎日。
そしていよいよ、最終日のクロージングセレモニーもあと3日後に迫っていた。
(えーっと、椅子の配置図と備品の置き場所。あとは受付の設置とケータリングはここで…)
瞳子はセレモニーの流れを思い浮かべなら、時系列で確認事項をチェックしていく。
当日の司会は千秋一人の為、なるべくスムーズに進むように、事前に自分が出来ることはやっておきたい。
(本当は私が会場でお手伝い出来れば良かったけど…)
千秋も大河達も、瞳子が会場に来ることには難色を示した。
マスコミが取材に来るし、何かあっても瞳子を守れる保証はないから、と。
確かに自分のせいで、忙しい皆の懸念事項を増やす訳にはいかない。
瞳子は大人しくオフィスで待機することにした。
当日、ギリギリまで最終確認をすると、瞳子は皆を笑顔で送り出す。
「行ってらっしゃい!」
「ああ、行ってくる」
キリッとした表情の皆が出て行くと、オフィスは、シーン…と静まり、瞳子は寂しさに胸が詰まった。
(どうか成功しますように…)
祈るように両手を組むと、気持ちを入れ替えてキッチンに立つ。
今夜遅くに帰ってくる皆を少しでも労いたくて、ネットスーパーで注文した食材で料理を作ることにしたのだった。
簡易的なキッチンなので手の込んだ料理は無理だが、出来る限りたくさんの品を次々と作っていく。
(そろそろ始まったかな?)
タイムスケジュールを思い出し、壁の時計を何度もそわそわと見上げてしまう。
(大河さん達なら大丈夫!司会も千秋さんだし、きっと大成功で盛り上がってるはず)
フライドチキンやラザニア、サンドイッチにサラダ、スープやデザートなど、丸テーブルに所狭しと料理を並べて皆の帰りを待った。
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