蘇る恐怖心

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「ただいまー」 時刻は23時を過ぎた頃。 ガチャッとドアが開いて、タキシード姿の透が現れた。 他の3人もあとに続いて入って来る。 「お帰りなさい!お疲れ様でした」 「やあ、アリシア。待たせたね。一人で寂しかったかい?」 「はい、とっても」 すると透は、おお?と意外そうな声を出す。 「どうしたんだい?今夜はやけに素直だね」 「だって本当に寂しくて。皆さんが帰ってくるのを首を長くして待ってたんです」 「そうなんだ、嬉しいなあ。えっ、ひょっとしてこの料理、君が作ったの?」 「ええ。でも皆さん、パーティーのお料理でもうお腹いっぱいですか?」 「それが全然だよ。忙しくて食べられなくてね。早速頂いてもいいかい?」 「もちろんです。あ、今ワインも持ってきますね」 瞳子は満面の笑みで、皆のグラスを用意する。 「それでは、ミュージアムの成功を祝して」 透の音頭の後、乾杯!と皆でグラスを掲げた。 「うん、旨い!どれもほんとに美味しいよ、アリシア」 「良かったです。たくさん召し上がってくださいね」 「こんなに気を遣ってくれなくても良かったのに」 「いえ。皆さんには散々お世話になりましたから。今日まで本当にありがとうございました」 今日まで?と、透がキョトンとする。 「え?明日からは違うの?」 「あ、はい。私、明日自宅マンションに戻ります」 えっ!と、透だけでなく吾郎と洋平も声を上げる。 「瞳子ちゃん、明日出て行くの?」 「そんな急に…。どうしてまた?」 瞳子はグラスをテーブルに置いて、改めて皆に頭を下げた。 「これまで皆さんの優しさに甘えてしまってすみませんでした。私の為に、ここに泊まり込んでくださって。ゆっくり眠れない日々でしたよね?申し訳ありませんでした。少しでも早くここを出たいと、大河さんにお願いしてあったのです。今日のセレモニーが終わるまで、と」 「そんな…、聞いてないぞ?大河」 皆に視線を向けられて、大河は口を開く。 「別に明日とは言ってない。セレモニーが終わって、マスコミの様子が大丈夫ならって…」 「はい。セレモニーも無事に終わりましたし、千秋さんに聞いたら、もう事務所に張り込んでいるマスコミもいないそうです。なので明日、ここを出て行きますね」 セレモニーの成功を祝うはずが、4人はなんとも言えない寂しさに言葉を失っていた。
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