蘇る恐怖心

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「瞳子さーん!」 「うわっ!」 事務所のドアを開けると、亜由美が飛びついてきた。 「やっと会えたー!もうほんとに心配したんですからね?」 「あ、ありがとう。亜由美ちゃん」 よろけつつもなんとか堪らえ、笑顔で亜由美と再会を喜ぶ。 「瞳子、お帰り」 「千秋さん!色々とありがとうございました」 千秋は瞳子に笑いかけると、瞳子のすぐ後ろにいた大河に頭を下げた。 「冴島さん。今回は本当にお世話になりました。今日も瞳子を送り届けてくださって、ありがとうございました」 「いや、俺達の方こそ彼女に手伝ってもらって助かりました。それより、マスコミの様子は?」 「今はもう誰も見かけないわ。電話での問い合わせもないし、落ち着いてると思う」 「そうか。でもまだ油断はしない方がいい」 「そうね。瞳子には事務所での勤務だけお願いして、まだしばらくは表に出る司会の仕事は控えてもらおうと思っていて…。それでいい?瞳子」 「はい、もちろんです」 千秋に頷くと、瞳子は改めて大河に向き直った。 「大河さん、何から何まで本当にありがとうございました。皆さんにもくれぐれもよろしくお伝えください」 「分かった。また何かあったら、いつでも連絡くれていいから」 「はい、ありがとうございます」 「じゃあ、俺はここで」 大河は手にしていた瞳子の荷物を差し出すと、事務所を出て行った。 「ひゃあ!なんですか?あの超絶イケメンモデルは!」 亜由美が目をキラキラさせながら、大河が出て行ったドアの向こうを見つめている。 「私、思わず固まっちゃいましたよ。あーあ、ようやく我に返って自己紹介しようと思ったら、さっさと帰っちゃって。瞳子さん、あの人とずっと一緒にいたんですか?うらやましい!」 「ほら、亜由美!あなたはそろそろ現場に向かわないと。衣装は持ったの?」 「あ、忘れてた!」 慌てて衣装部屋に駆け込む亜由美にやれやれと苦笑いしてから、千秋は瞳子の肩に手を置いた。 「大変だったわね、瞳子。大丈夫だった?」 「はい。皆さん、とても良くしてくださって。千秋さんも、こちらのマスコミ対応ありがとうございました」 「ううん。私は毎日ちょっとした有名人気分が味わえて楽しかったわよ。でもさ、最後の方はみんな見慣れちゃったのか、私をちらっと見たらもう無反応。変わり身の早さったらないわよね」 ふふっと笑ってから、さあ!仕事しましょうか、と千秋は気合を入れる。 「はい!」 瞳子も久しぶりのここでの仕事に、張り切ってデスクに着いた。
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