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新たな生活
千秋が新たなマンションを急いで探してくれ、瞳子は千秋や亜由美にも手伝ってもらい、無事に引っ越し作業を終えた。
新しい部屋で荷解きをしていると、衣類に混じって友也のタキシードのジャケットがあった。
(そろそろ先輩に返さないとな)
瞳子はTVジャパンの住所を調べ、匿名配送で倉木 友也様宛にジャケットを送ることにした。
何か一筆書き添えようかとも思ったが、せっかく騒動が下火になってきたところに何かあってはいけない。
彼の手に渡る前に誰かが開封する可能性も考えて、何も添えずにただ丁寧にジャケットを包んで箱に入れた。
そしてふと友也の言葉を思い出す。
『もしもう一度どこかで偶然再会出来たら、その時はさっきの返事を聞かせてくれる?』
たとえいつか偶然再会したとしても、自分はやはり断るだろう。
(私は誰ともつき合えない。この先もずっと)
忘れかけていた自分の影の部分を思い出した今、気持ちが揺らぐことはない。
友也とも、他の誰ともつき合うことは出来ない。
(それが相手と私自身を傷つけずに済む唯一の方法なのだから)
瞳子はそう自分に言い聞かせた。
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