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「なんでだよー。なんでダメなんだよー」
「うるさい!何度言ったら分かる。ダメなものはダメだ!」
「ちぇっ、大河のケチ!分からず屋!頑固者の石頭!」
「なにをー?!」
透と大河の不毛なやり取りを、まあまあと吾郎が手で遮った。
「大河。透の駄々コネは放っておくとして、俺と洋平に分かるように説明してくれよ。どうして今度のミュージアムの宣材映像に瞳子ちゃんを起用したらいけないんだ?」
「そうだよ。次回作は瞳子ちゃんもデザインを考えてくれてたし、何より水と海がテーマのミュージアムに瞳子ちゃんの透明感は合ってる。瞳子ちゃん以上のイメージモデルなんていないだろう?」
大河はひたすら自分のデスクで作業をしながら、口だけ開く。
「次作の宣材映像は、以前と同じように人物は入れない。前回はたまたまだ。今後もイメージモデルを起用するつもりはない」
「だから、どうしてだ?理由は?」
「特にない」
はあー?!と、吾郎と洋平は不満気に声を揃える。
「何だよ、それ。透じゃなくても突っ込みたくなる。大河、いったいどうしたっていうんだよ?」
「別に。お前達こそどうしてだ?今まで人物を入れるのは、マイナスイメージにしかならないって言ってたのに」
「いやいや、それを大河が覆したんだろ?マンネリ化はゴメンだって。瞳子ちゃんが入ればパーフェクトパッケージになるって言ったのもお前だぞ?」
「それを更に覆した。それだけだ」
そう言うと立ち上がり、スタスタと隣の部屋へ向かう。
「ちょっと仮眠するわ」
パタンとドアが閉まり、3人は呆気に取られて顔を見合わせた。
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