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気温の高い日が続き、季節は確実に夏へと移り変わっていく。
瞳子は相変わらず、事務所で内勤をする日々を送っていた。
千秋は瞳子の分まで司会の仕事を引き受けて忙しく、事務所は瞳子一人になることも多い。
そしてもうすぐ始まるアートプラネッツの新たな体験型ミュージアムのオープニングイベントも、千秋が司会を頼まれていた。
「あー、いいなー。行きたいなー。楽しそうだなー」
アートプラネッツから送られてきた資料やホームページを見て、瞳子は思わず足をバタバタさせる。
「絶対面白いよね。透さんと洋平さんに見せてもらった制作途中の映像も、すごく素敵だったもん。あー、行きたい!行ってもいいかな?いいよね?」
事務所で一人、ブツブツと自問自答する。
オープニングイベントはマスコミも来るし、前回のこともあって行く訳にはいかない。
だが、平日の空いている閉館間際に、一般客に紛れれば大丈夫だろう。
そこまで考えて、いやダメだと首を振る。
警戒しなければならないのは、マスコミだけではない。
いつぞや、マンションの前で待ち伏せしていた男のように、自分の顔と名前を覚えている人もいるのだ。
そんな人に写真を撮られ、SNSにアップされれば、せっかく鎮火した騒動がまた再燃しかねない。
(どうしよう、何かいい方法は…)
そして瞳子は閃いた。
間宮 瞳子だとはバレずに、堂々とミュージアムを観て回れる方法を。
(これなら大丈夫よね。うふふ、うまく潜入してみせる!)
密かにガッツポーズをして、瞳子は早速計画を練り始めた。
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